20世紀の人々をかく ~アウグスト・ザンダーの写真から~

2017年4月27日(木)~5月6日(土)、D&DEPARTMENT HOKKAIDO GALLERYにて、『20世紀の人々をかく ~アウグスト・ザンダーの写真から~』展を開催しました。
   

 
August Sanderとは
アウグスト・ザンダー(1876~1964)は、ドイツを代表する写真家のひとりです。第二次世界大戦をはさむ1890年~1950年代、ザンダーは農夫や職人、芸術家など、さまざまな職業の、様々な年齢の人々を撮影しました。ナチス政権下、ザンダーが隠し、守りぬいた写真は、4万枚におよぶそうです。1980年代になって、これらの写真は『20世紀の人々』として写真集にまとめられ、世界的に知られることになりました。

 
 
展示1:こどもの絵と文
2015年9月、こどもたちが描いたザンダーの写真の模写作品(計62点)に、それぞれが書いた文章を添えて展示しました。

モデルの表情や服装はもちろん、写真の背景に写り込んでいるものや、それぞれのタイトルにある職業や階級を手がかりに、モデルとなった人物がどのようにその時代を生きていたのかを想像して文章を書いています。

女性の気持ち、経営者の目線、こどもの心理、兵士の感情……。私たちおとなが予想していた以上の「ことば」や「感情」がこどもたちの中から出てきました。ザンダーの残した写真を通して、二十一世紀に生きるこどもたちの中で、想像がこんなにも膨らむとは。

「え、これ、本当に子どもが書いたの?」という声が多くありました。「文章はおとなが書いていたのかと思っていた」「どうしてこんなことを思いついたんだろう」さらに「たまにおかしい話があっておもしろい」「いろいろで、なんかすごいですね」などなど。

これらのこどもたちの作品は一冊の本にまとめ、絵本としても保存しています(非売品)。

この展覧会の開催を機に、ドイツ・ケルンでザンダーの作品を管理しているDie Photographische Sammlung / SK Stiftung Kultur(SK文化財団・写真コレクション) にこの本を送って見ていただきました。こどもたちの言葉の英訳も、まほうの絵ふでの卒業生が担当(村山千晶)。とても喜んでいただき、写真美術館のライブラリーに収蔵・公開いただいているとのことです。

 
 
 
展示2:20世紀ドイツの景色
2017年4月、「まほうの絵ふで」の中高生がザンダーの写真をもとに、20世紀ドイツの風景を大きな画面に描きました。

ザンダーのモデルが生きていた世界に入ってみよう!という試みで、白黒写真にちなみ画材は鉛筆のみ。小さな作品は1m×1.2mくらい、大きなものは2.4m×4m。普段から絵を描き慣れている生徒たちですが、鉛筆だけの制作でこんなに大きな作品は初めてでした。

展示中、絵の中に入ったり、前に立って記念撮影をすることができました。モノクロにプリントしてもらうと雰囲気満点。ドイツの風景に現代っ子がタイムトリップ!?

このコーナーはなかなかの盛況でした。GWという時期もあり、ふらりとこの会場に立ち寄られた観光の方たちにも喜んでいただいたようです。こどもたちもいろんな作品でポーズを決めて、はいチーズ。ご家族で来られた方もみんなで楽しめたようです。


 

ギャラリーの中はモノクロの絵だけで、画材は鉛筆のみという、こどもの絵の展覧会にしては珍しい試みになりました。実は会場入り口に展示した大きなタイトル文字も、まほうの絵ふでの授業の中で中高生の生徒たちが描いたものです。

一文字ずつカットし、配置を調整して、輪郭をなぞり、中を丁寧に塗っていきました。

普通にプリントされた文字に慣れた私たちの目には、鉛筆の表現がすごく新鮮に感じます。一連の制作を通して、鉛筆の表現の魅力を再発見する機会になりました。


 
会場では、ケルンでザンダーの写真を管理しているDie Photographische Sammlung / SK Stiftung Kultuから提供していただいた貴重な資料や、ザンダーについてのDVDも紹介しました。