まほうの絵ふで×ただのいぬ。

2007年7月26日〜8月12日まで開催した『まほうの絵ふで×ただのいぬ。』

全国的な広がりをみせるただのいぬ。プロジェクトから問いかけられた、犬を題材にする作品づくりに、まほうの絵ふでの子どもたちが挑戦しました。

会場となった富樫ビルでの「プレゼンテーション」(作品展示)のほか、子どもたちの活躍の様子は、新聞・各テレビ局などでも報道され、各方面から大きな反響がありました。

【4000匹のただのいぬ。】

小学校3年生以上の子どもたちが制作した、たくさんの犬。会場に並べてみると、まさに圧巻!もの作りを通して、その数字をリアルに感じてみようと、北海道内で一年間に収容された犬の数、約4000匹の作品づくりにチャレンジしました。

制作は2泊3日、会場に泊まりがけで行いました。ひとつひとつは小さな作品ですが、綿と石膏による犬づくりは、なかなか子どもたちの思うようには進みません。一日一日、あっという間に時間が過ぎて行くなか、犬づくりは延々と続きます。

具体的なイメージを膨らませにくい、4000という数字。漠然と「多い」ということはわかりますが、それがどれほど大変なものか…。今回ばかりは、とにかく手を動かして、ひたすら粘り強く作るしかありません!

会場には、様々な方が制作の応援に来てくれました。中でもおだやかで賢い盲導犬は、子どもたちに大人気。他にも犬を連れて様子を見にきてくれた皆さんや、報道関係の方々の存在も、子どもたちのとても良い刺激になりました。


「間に合うのかな…」傍で見ている大人たちも本気でハラハラさせられましたが、3日目の展示時間ギリギリになって、4000匹の犬、完成!すごい!

多くの人たちに、これだけ強烈なインパクトがあったわけですから、体験した子ども自身にとってはなおさらのことでしょう。忘れられない体験になりますね。

【ただのいぬ。の肖像】

絵画を専門に学ぶ、中・高校生の生徒たちが、犬をモデルに大型絵画に挑戦。いつもの静物や人物画とちがい、動物を題材にした本格的な制作は、初めての試みでした。


制作前は「動き回る犬を、どうやって描くの?」と、なにかと疑問の多かった生徒たち。でもこの年齢の子どもたちにとって、犬は非常に思い入れのしやすい題材でもあります。そして6日間、生徒たちの間で立派に活躍してくれたモデルは、人なつっこくて表情豊かな、とても描きごたえのある犬たちでした。

会場に見学にいらした方々は、生徒たちの制作の様子を見て、「みんなすごく真剣ですね」とおっしゃます。限られた時間の中でより良い結果を出すため、生徒たちは黙々と制作に取り組んでいました。
期間の折り返し地点で行った中間合評では、自身の作品について「自分なりにどうしたいか」を発言しつつ、先生から非常に厳しいコメントをもらい受けます。ピリッと意欲をかき立てられ、それぞれ制作の方向を確認していきました。


この「ただのいぬ。の肖像」では、完全に「子ども向けの美術」を卒業し、かなり本格的な「大人味」の制作を体験しました。これをきっかけに知った犬たちの現実も、じっくりと時間をかけて、生徒自身が考えていってくれたら良いなと思います。

【ただのいぬ。トークショー】
ただのいぬ。プロジェクトの中心で活躍する、服部貴康さん(写真家)、小山奈々子さん(アートディレクター)、長谷川潤さん(生活工房)が、東京から足を運んでくださいました。まほうの絵ふでのいわゆる校長・堀田先生とともに、子どもたちの活動について、そしてただのいぬ。プロジェクトの紹介とこの先の展望について、お話を伺いました。

トークショーにご来場の皆さんには、子どもたちが作った「4000匹のただのいぬ。」に首輪をつける、という体験をしていただきました。この日、用意した首輪は、1000本のみ。北海道で保護された約4000匹の犬のうち、引き取り手がみつかったのは約1000匹だけ、だったそうです。もらわれていく犬を、自分の目と手で選ぶ。ちょっと切ないのですが、美術の鑑賞とはまたちがった目線で、子どもたちの作品を見ていただけたと思います。

そして翌日から始まった作品展示期間「プレゼンテーション」でも、ご来場のみなさんに、1つずつ作品を持ち帰っていただきました。それぞれに名前をつけていただき、ただのいぬ。が、名前のある犬に!との試みです。みなさん快く引き受けてくださり、各ご家庭に飾られている様子など、うれしいご報告が寄せられました。そしてこの他にも、世田谷文化生活情報センター生活工房で開催の『犬の鑑札リデザイン展』ほか、各方面に犬の作品が旅立っていきました。4000匹の犬たちが、広くみなさんのお手元に届くといいですね。