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未来をつくる眼差し展が終了しました

2010年1月12日から17日まで、大丸藤井セントラル7F・スカイホールにて開催した展覧会『未来をつくる眼差し』。希代のコレクター、そして様々なブームの仕掛人としても知られている柳本浩市さんとともに、次の世代をつくる子どもの教育を軸に様々な活動を展開しました。
10月〜12月にかけて、子どもたちとともに観察・調査のワークショップを行ってきた柳本浩市さん。参加した子どもたちからは「博士」と呼ばれ、何でも知ってる天才・柳本博士は驚くほど人気がありました。しかしご本人の子ども時代の話を聞くと、「とにかく変わった子どもでした。」幼少期から興味のおもむくまま、様々なものを集め続けた柳本少年。その収集歴や目線の確かさは、大人も顔負けの博物館級。雑誌の切り抜きをスクラップしたり、手に入る限りのものをていねいに集め続ける…そんな当たり前のことを延々積み重ねることで、柳本少年は希代のコレクターとして名をはせ、数々のデザインブームを巻き起こすクリエイターへと成長していきました。
『未来をつくる眼差し』では、そんな柳本博士の莫大なコレクションの現物をご紹介。

壁面には貴重なコレクションがずらり。切手の収集は海外のものや古いものが中心。リーバイス&リーに関する資料では、ジーンズのタグや100年前の領収書など、付属品・周辺のグッズが。

ガムの包み紙はなんと「幼稚園の頃から自分の食べたガムの包み紙をとっておきました」ですって。海外に出てもこまめに保管し、道ばたやゴミ箱で偶然発見した時にも綺麗であれば拾って持ち帰っているそう。
ガラスケースの中には、幼少期から続けているスクラップブックや、天才ぶりがにじみ出る手描きのノートも。

文具は世界中の骨董市や文房具屋さんで集めた新旧文房具のコレクションが。最も古いものでは、鉛筆が発明されてからまもなく販売された約240年前のものまで!思わず見入ってしまう。
「世界のミルクマップ」では、地図上に世界各国の牛乳パッケージを並べて展示。地域ごとの文化や生活の特性を比較して見ることができました。


一方、子どもたちが制作した展示物も来場者の注目を集めました。消費者がどのようにしてものを選んでいるのか、まずは買い手側の目線を知ることがデザイン教育のスタートにあるべきという柳本博士。ご自身も機会があるたびにいわゆる「オバちゃん観察」をしているとか。そんな博士の指導のもと、10月に子どもたちが実際に地元のお店に出かけ、あらゆる行動を調査した結果がこれ。超リアルな消費行動が明らかに!

お客さんの細かな動作を記録すること約700件…結果、商品がどのように選ばれているのか、人の心理状態や商品ごとの傾向を子どもたちなりに推測して表示しました。いわゆるマーケティング会社の仕事よりも細かく、リアルな消費者行動調査に思わず大人もうなる。
さらに圧巻だったのはこちら。
会場の中央に張り巡らされた、柳本博士の脳内マップ!

博士の頭の中で関連しているキーワードを糸でつなぎ、ギャラリー空間の中にリアルな情報網を作るというしかけ。来場者がくじを引き、出題された2つの関連するパネルを探すところからスタートです。初日はスカスカだった空間が…

最終日にはまるで宇宙!

「身につけると頭が良くなる」という摩訶不思議な噂の博士バッジ欲しさに子どもたち猛烈ながんばりをみせる。読めない漢字や聞いたこともないようなカタカナも何のその。次々に問題をクリアし、バッジをゲッツ。小学生で10個越えのツワモノもちらほら。

横で見ていた大人たちも思わず編み目の中へ。もはや立ち上がれないほどの編み目の中では、絡む絡む!体が小さな子どもたちの方がすいすいとすり抜けていたのが印象的でした。
会場に吊るされたパネルは全部で205枚。実はこれ、博士のワークショップで出題されて子どもたちが調べ、解説の文章とイラストを描いたもの。なかなか良い出来でこれまた大人のみなさんに大ウケ。初日と最終日には柳本博士が会場に登場しギャラリーツアーを実施。コレクションをはじめ、博士の幼少期や、子どもたちとのワークショップの話などなどでは衝撃的な数々のお話を聞かせてくれました。
最終日の夕方、会場にいた子どもたちとパチリ。

活動にご協力くださった皆様、ありがとうございました。
デザイン研究チーム/消費行動を調査する
10月10日(土)
まほうの絵ふでに博士登場!何でも知ってるおもしろ博士。子どもの質問にも優しく教えてくれる…聞く人を飽きさせない豊富な知識と話題で、さっそく子どもたちのこころをわしづかみ!いろいろ解説してくれる話がおっもしろいのなんの…先生たちまで「なるほど!」「そうか!」発見の連続。ぬぅ…これは勉強になるっす。

今日みんなが実施するのはスーパーマーケットでのお客さんの行動調査。どうやって商品を選んでいるのかを、ひたすら観察→メモに記録してデータを持ち帰るのだ。調査するにあたり問題点はふたつ。調査隊の半数は小学生のため、①お客さんの行動を客観的に見ることができるか。 ②大人の考えを想像することができるか。出発前に客観視やお店の作り、調査方法についてなどの概要を学んだあと、いざ地元のスーパーマーケットへ出発。

土曜ということもあり、お店はかなりの混雑ぶり。
「いいか、お客さんの邪魔するなよ!」
「怖いおじさんいるかもしれんぞ!」念を押されて調査スタート。

さっそく店内に散らばってみたはいいが、「ど、どうしよう」
各自で調査対象のターゲットを探すのだ。

商品を手に取ったり、値段を見たり、隣の商品と比べて見たり…ものを選ぶ時の手や目の動きをひたすら観察しつづけて記録をとる。
「バレたら嫌がられるかも…」びびりまくる子どもたち。はじめはおっかなびっくり、遠巻きに…

商品がカゴに入ったら、すかさずダッシュ。
買われたものは何か?商品名・メーカー・値段まで詳細データを書き込まねばならん。

途中、柳本先生から観察の指導が。
「買い方の違いや傾向を見るために、ある程度ひとつの商品を続けてチェックするのがポイント」
「一番上のをよけて、わざわざ下の方から取ったりしてない?」
た、たしかに!

これじゃ調査にならん!とばかりに、だんだん大胆になる調査隊員。
すぐ隣で堂々と凝視。

買い物してるフリする作戦。

向かい側に立って正々堂々、真っ向作戦!

あ、ここにも!

ぬぅ…短時間でここまで成長するとは。マーケッターの素質あり?!
うーむ。なかなかいいとこ見とるぞな。
しかし…まだまだデータ数が足りん!調査活動は翌日に持ち越し。
10月11日(日)
巨人にむらがる子どもたち。初めはどこか人見知りしていた子どもたちも、知の巨人・柳本先生にはすっかり夢中ぞな。

どんな質問にもまっすぐ答えてくれるからおもしろいらしい。「6000年くらい前には…」「温暖化って言うけどそもそも…」「マヤ文明やインディアンの占星術では…」どこを突いても出てくる出てくる…だいたい、話のスケールが4桁くらいちがうのだ。そりゃおもしろいわな。
そして昨日に引き続き、スーパーマーケットへ。夕方と午前中では客層が違うことが判明。早速再度消費行動の調査にチャレンジ。

二日目はスピードが格段にアップ!子どもたちの目的意識もはっきりし、さらに買いそうなお客さんかどうか、ターゲットの見分け方までうまくなったぞな。短時間にも関わらず、昨日を超す数のデータをゲット。二日間で約700枚!がんばった。
教室に戻ったら、お昼ごはんを急いで食べて集めた情報の「見える化」。メモに記入した8種類の行動を、店内マップの上に色ドッドで表現してみるという試み。

店内マップは1.8m×2.4m。デカい!
各売り場に小さな点々をひたすら貼っていく。

昨日・今日でゲットしたデータの紙を積み上げると約12cm…ひい〜!しかし地道にデータを編集し続けるという、ある意味柳本さんらしい試みぞな。ここは先生たちも協力して、必死に貼り続けること2時間半…

妙なチームワークの良さも生まれた頃にやっとこさできあがったのだ。
では試しにデータを見てみるか。
例えば「ぶどう」はどうやって選んどる?

色を記号に置き換えると
B→A→C→B→G→A→B→C→G→H→G
つまり、値段を見る→手にとる→くわしく見る→手にとる→購入を決める→手にとる→値段を見る→くわしく見る→購入を決める→購入やめてもどす→購入を決める…と、買うまでにいろいろと迷ったり考えたりしてただな。
で、すげ事実が次々に見えてきた!
店内入ってすぐに積み上げられていた柿の売り場。今が旬の果物ぞな。

い、いくら何でも多すぎね?博士曰く「エスカレーターから店内に入る時、まっすぐ正面に見える」「後ろには野菜の緑もあり、柿の色がきれいに見えてた」「そのまま積んであるから、手にとりやすい」「裏返して見たり、隣の柿と比べたり、買う人のこだわりが表れる」ぬー、なるほど!
店の奥にあった割に、かなりにぎわっていたのはこちら。
豆腐や納豆のコーナー。

各ご家庭でこだわりがあるのか…よく見て買っている印象。
そして逆に、全くもってこだわりが感じられないのがこちら。

たまごを手にとる→購入を決める、
たまごを手にとる→購入を決める…
笑っちゃうくらいとんどの人が即買いしとるらしい。
ふしぎ!卵は何でもいいのか?
いやー、たしかにこうやって色や数量などで一目瞭然になると、データの傾向がよりはっきり見えてくるぞな。マップを見ることで、文字情報とは全く違った思考の回路が生まれてるような…これがまさにグラフィックのちからってやつ?

今回は観察力、とりわけ無意識に動いている人から、客観的な目線で情報をキャッチできるようになったぞな。さらに普段は何気なく見過ごしている店内に、大小さまざまな工夫があることも発見。そして何より大きかったのは、表現方法を工夫すると伝達力や理解の度合いを格段に高くすることができる…これってかなりクリエイティブな仕事ぞな。たったの二日間でこんなにたくさんの内容を盛り込むとは!さすがは柳本教授、感服いたしました。さらに博士の「データから仮説を立てるところまでやりたい」との一声で、このマップを使った作業は翌月の授業へ持ち越し。
11月21日(土)
うっすらと雪が降りはじめた11月。博士と久々の再会を果たし、早速前回の店内調査を見直しながら検証作業を開始。

不思議な行動やおもしろい動きは、吹き出しにしてマップ内に表示。

こうやって改めて書き出してみると、買い物をしている人たちって、ほんとにいろんな行動をとっているのだ。何度も触ってみたり、魚を押してみたり、缶を振ってみたり…そのほとんどが無意識にしているように見える。しかし今日考えたいのは、なぜそんな行動をとるのか?というお客さんの心理。それぞれ思いつくままに書き出して、付箋をペタペタ貼っていく。はじめは「安いから選んだ」「おいしそうだったから買った」というようなコメントが多かったが、柳本先生からあれこれヒントをもらううちに、だんだん興味深い仮説が出始める。
例えば同じ商品なのに、わざわざ下の方から取って買うのは…

不思議と手で触る率が多かったパン売り場は…

長々と迷って吟味されていた柿は…

ふむふむ、そうかも。他にも、

ぬぁるほどね。
賞味期限的な目線でいうと、そういう心理もあるのかも。

他人の行動から、ここまで心理を読み取れればなかなかのものである。
買い方・選び方が商品によって違うことがわかると、自ずと滞在時間についても気になり始める。柿やパンなど、選ぶのに時間がかかる商品のところは「売り場が広かった」。逆にたまごや豆腐などパッと買われるものは「取りやすいように積まれていた」「立ち止まりもせずに、歩きながら取ってカゴに入れていた」。さらに人気の惣菜売り場などは「奥の方にあった」ってことは…何らかのお店の意図があるに違いない。そういやペットボトルや牛乳など重たいものや、かさばるペット用品、ティッシュなどの大きなものは、レジの近くにあるよな!買い物の最後に手に取れるようにしてあるってこと?…柳本先生曰く「商品をデザインする以前に、買う人の目線を持つべし」なるほどなー。たしかにこれって、基本中の基本。なのに、デザインの専門教育でもなかなか触れられてない。これぞいわゆる「オバちゃん観察」、実際に現場で見るのが一番勉強になるぞな!…ぬぅ柳本先生、おそれいりましたです。
デザイン研究チーム/キーワードを調べる
11月21日(土)
「飛行機の中で少し書いてみました」と博士が取り出したメモ。
「…?!」しばしの沈黙…
おそるべし博士の頭の中。脳内マップ?

な、なんですかこの意味不明な言葉と、クモの巣みたいな線は…?「午後からは、それぞれに問題を出して図書館で調べものをします」

早めに昼食をとって、路面電車で図書館へGO!
ゴトゴト揺られること約15分…札幌市内で一番大きな図書館に到着。さてさて、博士からどんな問題が出されるのか…ドキドキ…

「先生!アーツ&クラフツって誰?」「漢字読めない…」「こくりつにしようびじゅつかん?」「ポール…ギャーゴン!」おいおい、恐竜か?

出題されたのは、
ロシア・アヴァンギャルド
コンスタンチン・ブランクーシ
武満徹
アーツ&クラフツ
ポール・ゴーギャン
国立西洋美術館
グスタフ・マーラー
ウィーン分離派
白樺派
ウィリアム・モリス
松方正義
…などなど。つーか博士、半数以上が小学生ですが…まず、人だかモノだかすらわかっとらん。簡単な注意事項だけ伝達して、さっそく図書室へ。

本の海に投げ出され、途方に暮れる子どもたち…果たしてちゃんと答にたどり着けるのか?!
11月22日(日)
前日に引き続き、博士から出題されたキーワードについて図書館で調べものを継続。あまりに予備知識がないため、はじめは相当苦戦を強いられたぞな。検索機で探してもなかなか良い資料が出てこず、本棚の前で途方に暮れる…

「博士ヒントください」

「これでどうですか」

なかなか筋がヨロしい、よく調べたねと誉められることもあれば、「これはちがうものだね」とばっさり切られることも。そのキーワードが何なのか、短く的確な答を求められる。例えば人物だと、経歴をシンプルにまとめられなかったり、思想や運動は定義そのものが一言ではなかなか表せない。さらに建築物などは「設計したのはだれ?」「特徴は?」うぅー
それぞれ苦戦しつつもどうにか形にまとめていく。




実は博士、子どもの学年・能力に応じて出題の難易度を調整していたのだ。中学生たちには、例えば印象派、民芸運動など聞いたことがあっても定義そのものが広くて一言でまとめるのはむずかしいものが。調べものをするってのは、根気と理解力はもちろん、要約力や特徴の抽出力が問われるのだ。

小学生たちには人名や建物などの固有名詞を中心に。博士から次々と出されるキーワードに子どもたちの興味も膨らんでいく。しかし…小学生たちには読めない漢字という高い壁が。さらにちんまい体には、本がでかくていちいち重い…

それにしても…博士が出す絶妙なヒントにはワシも舌巻いた!子どもが何に困ってるのか、相手の能力や興味を的確に捉えてアドバイスしてくれるのだ。すげ…まだ数回しか会ってないのに、ぬぁんでわかるの?!

だいたい、検索機で調べても、ちょうどよくドンピシャな資料があるとは限らないのだ。予備知識がなくそのキーワードだけが頼りの子どもたちは、便利さとともに仕組みの限界も感じつつ、結局は「歩く辞書」柳本博士のところに走るのである。この調べものの活動は博士曰く「リンクするキーワードを仮説によって導き出すしかない。つまり、ネットにヒットしない情報をいかにリアルフィールドで導き出すのかの訓練」。たしかに検索して出てきた本の近くに同じキーワードについて書かれた本があっても、子どもたちのアンテナには全くひっかからないん。ワシも横で見ていて不思議だったのだ。系統立った知識が必要ってことだな。
えふでに戻り、それぞれメモリ容量いっぱいになった頭を整理する。ペンを片手に、何やら板書をはじめる博士。

さらさらと今日のキーワードを書き出す。

「民芸運動を調べた人は?」「バーナードリーチを調べた人は?」それぞれの調査結果を発表してみると…

お互いどこかでつながりがあることが発覚。「へーっ」「なるほど!」ここにきて、キーワードがリンクするという意味を実感する。

博士がよく言う、「ひとつの知識がどこかとつながって線になる。線が増えていくと、いつしか面になる」ってのはこういうことなのだ。たしかに博士と話していると、ひとつのことからいろんな話題がつながって出てくる…まさに芋づる式。天才の頭の中ってこんなふうになってんだな!しかもそうやってできた面が増えるといつしか立体になってくっつーから…博士の脳はまるで宇宙ぞな。
さてさて
ここから先はえふでの腕の見せどころ。日頃鍛えたドローイングの力を発揮するのだ!

資料写真を自分なりの絵で表現していく…つーても、ワシがするのはいつもの体育会系・絵画指導でございます。
市川崑。ルーシー・リー。

安藤忠雄。

武満徹。

イサム・ノグチ

アンリ・マティス。若いのう。

グスタフ・クリムト。こりゃ傑作!

他にも建物や、思想を象徴するようなアイテムをピックアップして描いてるのだが、博士からもえふでの子どもたちの描写能力は「なかなかいいです」とお褒めの言葉をいただいだのだ。えっへん。
そして1月の展覧会ではぬぁんと…会場に博士の脳内マップを再現するとな!しかも中に入って探検できるように、超特大サイズの立体マップっつーから…す、すげくね?しかしそのためにはまだまだキーワードが足りんのだ。ということで、つづきは来月のワークショップで。
12月26日(土)
すっかり雪景色になった札幌。まず朝一番には、えふでのウェブに掲載していた柳本博士のコレクションの数々が教室に登場。現物だぜ!

博士のファイルから出てきたのは、ガムや砂糖の包み紙、牛乳びんのふた、マッチのラベルなど身近なもの。さらにはオリンピックや万博グッズ、エアライン関係の資料まで…本物を目の前にするとさすがにすごみがちがう。博士に詳しい解説を聞く。

おもしろかったのは集め方のコツ。例えばガムなんかは「食べたらみんな捨てちゃうでしょう。それをシワにならないようにクリアファイルなどに挟んで旅行中にためていく。そして帰って来てから、個別のファイルに入れていくんです」ぬぅぅ…目のつけどころもすごいが、何せ博士はマメ!やろうと思えばできることも、これだけていねいに何年も続けた結果…「ガムの包み紙はだいたい20万枚くらい」できそうでできないってまさにこのこと。博士のファイルはため息が出るくらい美しいのだ。ひとつひとつは珍しいものではないが、これだけ整然と並ぶと…ものの価値が根底から変わっていくのがよくわかるぞな。
そして制作の前に、1月の展覧会プランについて子どもたちに説明。「この中央にたくさん立ってるの、何だと思う?」あ、ひょっとして…

「今調べて絵描いてるやつでしょ」そのとーり!勘所のいいえふでっ子たちは思わずつばを飲む。「何枚あるのかな」「間に合うの?」こりゃおちおちしてられんとばかりに、さっそくチームに分かれて調べものがスタート。今月は文明の利器、インターネットを使ってさくさくと資料を集めます。

先月同様、博士から出題されたキーワードが何なのかを調べていく。今回は100文字前後にまとめるのだ。要点を簡潔に、かつ的確に。博士に提出して合格したら赤いシールが。

ダメな場合は延々調べ直しでございます。なかなかOKが出ず手間取る場面もあったが…

しかし、先月の「魔の図書館」の経験から比べると、ネットの検索はかなり早い。苦労した甲斐あって、キーワードがダイレクトに出てこない場合には周辺の事柄からじわじわと調べていくという技がすっかり定着したもよう。この辺は要領の良さやセンスも問われるところだが…調べもののテクニックについては相当うまくなったぞな。何事も経験だのう。
さらにイラストの資料となる写真や画像も各自で出力。絵を描く方もすっかりお手のもので、ラボはもちろん、ジュニアの小学生も負けじと数をこなしていく。

こちらは深沢直人さん。

田中一光さん

ワシの今日一番のお気に入りはこれかな。フリーダ・カーロ。

えふでも博士も子どもに厳しい方だと思うが、それでも今日一日、子どもたちは感心するほど集中力があったぞな。しかし!現実は…

足りねー!ぜんぜん足りてねー!しかも博士、キーワードをさらに追加するらしいのだ!明日の昼までに仕上げろって…うーむ、えふでの体育会系ぶりがこのあたりで出るのだ。しかし泣いても笑っても明日が最後。博士のスペシャル講義もあるらしいし、がんばるぞ!
12月27日(日)
いよいよ最終日となった博士の授業。朝から博士はこんなものを制作してくれました。

博士の描く字、すげいいであろ?素材や画材の特性をちゃんと考えながら制作しとるのがよくわかる。つーか線自体がこんだけいいってことは、絵描くセンスも相当あるぞな。まさに何でもできる超人だな。

実はこれ、展覧会場の案内に使う看板なのだ。ほんとは小さく書いてもらったものをパネルに大判出力するつもりだったのだが…博士に相談したところぜんぶ手書きでチャレンジすることに。これは超レアなお宝になるぞな!子どもたちへの指示をしつつ、質問にも答え、さらに下描きも何もなしでひたすらキーワードを書き込んでいく…この大きさの画面だから、体力も集中力も求められるが、さすがなのだ!恐るべきことに文字の書き損じはひとつもなし。完成品は展覧会場で見てくれたまえ。
昨日から続いている子どもたちの調べもの・イラスト制作、最終日の追い込みは本気でつらかったぞなー。描いても描いてもなくならない博士のキーワード。前日の帰りに「宿題」のキーワードをもらい、家に帰ってから調べてたり、朝早めに来てスタートしたのもいたのだが…

昼食の時間が押したこともあり、疲労はピークに。そんな時でも博士はたんたんと、着々と描きつづける。

うーむ。どうしたらそんなに集中力が続くんですか。やはりこれって子どもの頃からの体力づくりみたいなもんでしょうか。
最終的に博士から出題されたキーワードは計205問。子どもたちが必死になって調べた解説とイラスト作品は、展覧会場で脳内マップとしてお目見えします。
デザイン研究チーム/牛乳パックから考える
教室に登場したたくさんの牛乳パック。

札幌でよく見るのは真ん中のサツラクか。全国各地でいろんなメーカーのがあるんだな。これだけでも比べて見ておもしろいもんだが…
なんと国を越えて海外の牛乳パックも登場。こちらはスイスの牛乳。箱の大きさからして違うぞな。

こちらは中国。漢字だらけかと思いきや英字も多数。

こちらはスウェーデン。色も模様もシンプルかつポップな印象。

これらのパッケージを通して、各国の文化や生活を考えてみるというのが最終ミッション。観察力や推測、調べものやレポートの出し方など、これまでの講座で行ったすべての力が試される。チームに分かれて、国別の牛乳パックからいろんなことを想像して調べものをしていくのだ。
こちらはスウェーデンチーム。着目点は「プラスチック製のボトル」「きれいなシマ模様」「パックの折り方、口の開け方がちがう」「裏面の表示は何だ?」などなど。

中国チームは「妙に英語が多い」「牛乳なのになぜか羊のイラスト」「牛乳には珍しい黒いパッケージ」というあたりに着目。パソコンでの情報検索も、キーワード調べで相当鍛えられたのだ。

こちらのスイスチームは全てのボトルに書かれていた3つの文字が最大の謎。「そもそもこれってスイス語?」博士のアドバイスもあり、スイスの国土の位置や人種、歴史まで検索が進められる。

各チームリーダーの調査結果の発表では、いろんなことが明らかに!まずスイスチームの報告によると、スイスはドイツ・フランス・イタリアに囲まれた国家で、国内ではその3カ国語が主に使われている。そのためどのボトルにも「MILCH」「LAIT」「LATTE」と3カ国語で牛乳の表示がされてることが発覚。

博士によると、スイスでは牛乳以外にもあらゆる日用品が各国の言葉で表示されてるらしい。すげ!スイスのデザイナーってたいへんぞな。ちなみに緑のパックに書かれた「Budget」というのは、牛乳以外にもいろんなものを作ってる大きな会社のなまえなんだって。
次の中国チームの報告では、宗教や食の安全問題の話題が飛び出す。はじめにこの羊のイラストについては「北京にはイスラム教徒が多く、昔から牛よりも羊を飼う伝統があるため、牛乳ではなく羊の乳を飲むそうです。」なんとこれは牛乳ではなくて羊の乳だったのだ。

さらに外国人が多いから?と予想されていた英語表記に関しては「食の安全面に不安があるため、周辺国、特にオーストラリアからの輸入が多いそうです」という報告が。つまりこの英語表記はオーストラリアの牛乳からきているもの。外国語が書かれていると、なおさら海外からの輸入品だというイメージも強くなるってわけ。

ちなみに右のパッケージでは高級感を出すために黒を使っているのでは?という報告も。

これらの一連の中国チームの報告を聞いた博士がひと言、「完璧ですね。」えーっ!あの厳しい柳本先生がいま、完璧って言った!快挙とばかりに教室騒然。一気にボルテージが上がる。
最後のスウェーデンチームの報告では、北欧デザインやエコロジーなど今話題のキーワードが。まず北欧デザインは全般的にさわやかできれい、シンプルなデザインが多いことが挙げられる。このストライプのパッケージはArlaという会社のもの。

ちなみに裏面には、牛乳を使ったレシピなどが書かれている。「これは月変わりで変わるそうです」。へー、いいね、おもしろい。

さらにスウェーデンはエコの面で先進国のため、牛乳にも紙パックではなくプラスチック製のものがある。そしてArlaでも使われているこの紙パッケージはテトラパックと呼ばれ、実はスウェーデンで発明されたそう。これが「全世界的に使われています。」ほんとだ、よく見たら他の国のパックにもテトラパック社の表示が!もちろん日本のにも

博士の補足によると、Arla社のシマ模様の太さは脂肪分を表しており、細いものほど低脂肪分。さらに牛のマークの周りが円で囲まれているのは、オーガニックに飼育された牛の商品で、より安全であることの目印。ってことを聞くとスウェーデンのデザイン力はすごい。お店に並んでるとこを想像しても、遠で見てすぐにわかるように工夫されてるのだ。
各チームの発表が一通り終わったところで、次に出てきたのは「牛乳の世界マップ」。西ヨーロッパや北欧はもちろん、アメリカやアジア各国のパックがずらり。

だんだんものの見方も鋭くなってきたのか、子どもたちの質問もなかなか鋭い。博士はどんな質問にも的確な答えをくれるから、実におもしろいのだ。

改めて考えてみると、博士にはほんとにいろんなことを教えてもらった。日常でも人やものをていねいに観察してみると、そこにはいろんなヒントや情報がある。他人の立場でものを考えることが、デザインの最も大切なこと。そして当たり前に思うものも見過ごさず、ひとつずつ分析して調べていくことで、いろんな可能性が拓けてくる。さらには文化の多様性。世界中のデザインには文化や宗教、歴史などの背景があり、言葉や絵も他人にどうわかりやすく伝えるかを工夫することで、様々な問題が解決できることもある。
〈まとめ〉
柳本博士が若いデザイナーを見ていて思ったことや、教育全般に対する疑問が今回のワークショップの原点にありました。結果、えふでが思うに「水と土のないところには花は咲かない」教育は陽の光のようなもんだ。興味や関心、そして基盤となる知性・体力。これは自分で何とかするしかない。逆に言うと、興味があれば、チャンスが生まれるってことじゃないか?それをどこまでやるかは自分次第。今回の柳本博士の授業についても、ここまでハードだとは誰も想像しなかったであろう。なおかつ調べものがここまでエキサイティングだとも思ってなかったであろ?やるって言ったらやるのだ。これが実践力。
柳本博士のコレクション
【コレクションその1】オリンピック

これは1968年メキシコオリンピックの選手村の食券。選手たちはこれを持って食堂に行ったんだね。他にも柳本さんはこのメキシコオリンピックのグッズをいろいろと持っています。
バスのチケット

競技ごとのチケット

これは選手のユニフォームにつけられたワッペン。何のスポーツかわかるかな。

柳本博士によるとこの当時のメキシコはまだ識字率も低く、文字が読めない人たちが多かったそう。そのためこのオリンピックのグッズには絵や記号が多く使われています。競技の種類や開始時間はもちろん、よくよく見るとチケットにはゲートや席の指定まで全てグラフィックで表現されています。ちなみにメキシコにはマヤ文明から続く絵文字の文化があったため、グラフィックデザインの面では先進国だったそうです。
なるほどそう見ると、これらのコレクションからメキシコという国についても知ることができるわけだ。ものを集めるのっておもしろいね。
【コレクションその2】リーバイス

これはジーンズのメーカー、リーバイスのレシート。よく見ると「San Francisco,Dec15,1899」って書いてある…ってことは、ちょうど今から110年前のものだ!もっと古いのがこれ。納品書みたいなものだな。

うーむ。今見てもかなり凝ったデザインが施されている。さらに万年筆の手書きの文字が雰囲気満点。
こちらは1950年当時、リーバイスの製品全部に付けられていたタグ。「創業100年」…ってことはリーバイスの創業は1850年。

柳本博士いわく、ジーンズってもともとは労働者向けのものから始まったので、ワークウェアのイメージが強くあったそうな。それが1930年代くらいから映画やコミックでカウボーイのスターなどが登場し、労働者の中でもカウボーイは良いイメージ(特におしゃれな)が出来たんだって。しかし1960年代に入るまでジーンズはまだ一般的ではなく、学校やレストランなんかに履いてったら追い出されるようなものだったらしい。

ちなみにこの4枚のカードは、当時多くの人たちに使われていた万年筆のインクを拭き取るための紙。そういった日用品に広告を入れるのって…今でいう街頭で配ってるポケットティッシュみたいなものか。ちなみにリーバイスのロゴの下に「オーバーオール」って書いてあるのもポイント。リーバイスでは1955年頃までジーンズのことを「(ウェスト丈の)オーバーオール」と呼んでたそうな。
このタグもね、今でもよくこんなのがジーンズのヒップポケットあたりについてるでしょ。ギャランティカードと呼ばれる品質保証をうたったものらしいが…「一番上にfor over 70 yearsとあり、創業が1850年なので、1920年代のものと判別出来ます。」ぬぁるほど。

こうやって博士と一緒にモノをみていくと、ほんとにひとつひとつがお宝に思えてくる。ただの切れっ端じゃないんだぜ。それぞれにストーリーを読み解くためのヒントが隠されてるのだ。
【コレクションその3】万博

これは1970年の日本万国博覧会、通称・大阪万博のリボン。えふでのお父さん・お母さんたちで行ったことある人いるのかなー。いやおじいちゃんおばあちゃんか。なんと6000万人を超す入場者が来場した過去最大の国際博覧会なんだって。みんなこれつけてたのかな。
1970年といえば、カラーテレビがまだそれほど普及していなかった時代。車持ってる家も少なかったであろ。『人類の進歩と調和』と題されたこの万博はまさにみんなのゆめみらい。そしてその頃、かの柳本博士は生まれたばかり…のはずが、ええええ?なんでこんなの持ってんの?

招待券!非売品って書いてある…
そしてこちらは若者向けの割引券。

右側に小さな文字で「¥600」や、安いっ!
…と思ったがちと待てよ。当時の物価ってどんくらいなんだ?ワシなりに調べてみたところ、ラーメン1杯が当時は140円くらい。だいたい今の5分の1くらいと考えると…単純に計算して大阪万博の割引入場料は約3000円くらいってとこか。
すごく気になって、これどうやって手に入れたのか博士に聞いてみた。そしたら「関西には万博専門のショップなどもあり、そういうお店やコレクターと交換したり、有効な入手方法は全部やってみます」とのこと。へえー、なるほどのう。
【コレクションその4】ガムの包み紙

ワシが好きなのはアップル…ってのはどうでもいいが、博士に聞いてみたところ、これは「チェコのものです」。世界各国のガムの包み紙を大量に集めてるそうな。その数ぬぁんと…約20万枚!ひい〜っまったく…気が遠くなるぞな。だって、札幌ドームでさえ4万人だぜ。野球観戦しながら全員でガム噛んだって…ってそんなこともどうでもいい。
問題は、博士がいったいどうやってこの数を集めたのかってことだ。
①毎日毎日、ガムを食べた。
②買いまくった。
③道ばたで拾った。
こたえはどれだ?
「これも大体万博グッズの収集方法と似てます。東欧は印刷物が結構あって、細かいもののコレクターが多く、比較的アンティークショップなどで見つけることが多いです。もちろん、見たこともないものが落ちてたらちゃんと拾っていきます」
さらに不思議なのは、その20万枚のガムの包み紙をどうやって保管してるのか?「全てファイリングして倉庫に保管しています」

ほ、ほんとだ。まだまだあるぞ。


中にはどこの国のかわからないのも…


相当な几帳面さ。これが20万枚分なんて…一体ファイル何冊分になるんだ?ぬあぁぁ!
【コレクションその5】コカコーラ

これは昔、コカコーラの輸送時につけられていたタグ。1920年代のものだそうです。当時は木製のケースに入れて運んでたんだって。どこに運ぶものかを書いて、迷子にならないようにしてたのか。それにしても、コーラのデザインって昔からあまり変わってないんだな。CocaColaって赤いロゴは遠目で見てもすぐ目に飛びこんでくるもんね。
この袋みたいのは何だろ?

実はよく見たら袋じゃなくて、筒になってんの!上も下も口があいてて、中に瓶を通して使うものなんだって。カフェとかで瓶のまま飲むとき、手がべたべたするので瓶のまわりにつけてカバーしてたらしい。へえー、流行ってたのか?
そしてこれ、広げると中にはコカコーラの作り方が載ってるん。

学校で工場見学に行ったらもらえたものらしい。1950年代はじめのもの。コーラを社会に浸透させるために子どもの教育にも力を入れてたんだな。たしかに、今は当たり前になってるけど、はじめは相当変わった飲み物だったろうね。
そしてマニアには涎垂であろうこちらのカード。1920年代から40年代にシリーズ化されたもので、仮面ライダーカードみたいなコレクション向けカードですって。自然史や科学、生物学を中心にした内容が多かったらしく、これは国立公園など自然の名所をコレクションするシリーズ。

子どもも大好きだよねえこういうグッズ。コカコーラはなんと1886年に誕生、約100年以上の時を経て現在の巨大カンパニーに成長しているそうな。ワシこの話聞いて、教育ってすげーって改めて思ったぞな。責任重大。だって、子どもの頃に影響を受けたものって大人になっても好きだよね。初期教育は白地に染込むように心に留まる。良くも悪くも、ブランドってすげーぞな。
…なんてことを考えさせてくれたこれらのアイテム。博士はこうやってつながりや社会の流れを見てるんだな。柳本博士が仕掛けてきたいろんなブームが大当たりするってのもなるほどうなずけるぞな。
【コレクションその6】マッチ箱のラベル

このマッチのラベルは1950年代のもの。どこの民族かと思ったらロシアですって。ひょっとして博士…マッチのラベルも大量にお持ちで?
「約50万点ほどあります」ひえ〜っ!それがこうやってきっちりとファイルに保管されてんだぜ。

こう見るとマッチってどこにでもある分、何だかその国や地方のテイストが強く出てるように見えるね。マッチは切手とかと同じようにコレクター多いと思うけど、博士はどうやって集めてるんだろ。

「東欧が中心です。ヨーロッパは広告要素が強いのですが、東欧は共産国だったので広告がほとんど存在せず、民族的な踊りや衣装、動物や虫、マナー告知や1番多いのはプロパガンダ的意味合いが強いものです。そういう意味もあって1950〜60年代の冷戦が一番激化している時代が多いです。旧東欧では結構コレクターが多く、現地では比較的よく発見できます。」

…博士ってばきっとさ、小学校低学年の頃から「プロパガンダ的」とか「共産圏では」とか、平気で口にする子どもだったんだぜ、まったく…稀少動物ぞな。学校の先生たちは相当困ったであろ。えふでに博士みたいな子がいたら、ワシならどうすっぺ。うーむ…生徒っつーより、ちんまい友達になってたかもしれんぞな。質問なんかしたりして…博士の子ども時代の収集物や記録も、みんな興味津々であろ?
【コレクションその7】砂糖の包み紙

なな、これ、砂糖の包み紙。カフェとかでよくグラニュー糖とか入ってるあれだって。「どんな地域でも使われていますが、こういうパック型と細長いスティック型と国によって主流が違ったりします。」ほほう。日本はスティック型が多いぞな。もっと細長いやつ。それにしても、これまた見事に多彩なバリエーション。

「もともと歴史が古くないので特性はほとんど無いのですが、60年代前後は方面が砂糖メーカーやコーヒーメーカーのロゴ、もう片面が全然違う企業の広告表記(銀行とか)の入ったものが多いです。」なるほどのう。小さなところも逃さず広告を入れるってわけか。

で、これも大量にお持ちで…?「これはカフェ周りのグッズとして集めているので比較的少ないです。約1万点くらいです。」ぐえぇーっ…それを少ないと思うか多いと思うかは人によりけり。つーか博士くらいであろ、少ないなんつーのは。

ていねいにファイリングされたこれらのアイテムは、もはやただのモノではない。ワシらは普通に生活している中で、どれだけちゃんとものを見てるのか。今使ってるものは、50年100年後にどんな価値あるものになるかわからんぞな。さらに古い倉庫に眠っているものや、道ばたに落ちてるものでさえ、博士の中では貴重な研究資料だったりする。このようにして博士の知の体系は増殖し続けていくのだ。
柳本浩市トークショーat AppleStoreSapporo 2009.9.6.sun


校長 ご紹介します、柳本浩市さんです。宜しくお願いします。
柳本 宜しくお願いします。
校長 非常にですね、わかりずらい方でございます。聞けば聞くほど「冗談でしょう?」と言いたくなるくらい幅が広くて…校長的にもちょっとご紹介しずらいところがありますので、もし宜しければ簡単に自己紹介的なものをお願いします。
柳本 では簡単に、どういうことをしているかを。まずこの画像、PENという雑誌でグラフィックデザインの特集をしたときに監修をしていました。

雑誌というのは、この時期にこれをやることによって、効果的に本を売っていく、というのが重要な使命でもあるんですけど、ちょうどこれがイラク戦争が始まる直前だったんですよ。それでここに「NO MORE WAR」と書かれていますけど…ちょうど60年代のベトナム戦争の時にグラフィックデザイナー達が立ち上がってやっていた熱みたいなものが…
校長 ちょ、ちょっと待ってください。直前というのがすごく気になるんですけど、それは…
柳本 だいたい雰囲気がそういう方向に行くという予感があった頃ですね。それが起こらなかったとしても時代がそういう方向に傾きかけていた時期です。そこでグラフィックデザインが何十年か前のベトナム戦争でどのような効果を出したかとか、「人が求めている心理」のようなところも、ちょうどタイミングが一致して、こういう特集を組んでもらったんです。これはPENが最初にやったグラフィックの特集なんですけど、これが爆発的に売れて、継続的にグラフィックデザインの特集をするようになりました。
そしてこれは札幌でもやったんですが、ブラニフ・エアラインっていうアメリカの幻の航空会社の展覧会です。

こんなにすごい会社があったということを、アテンダントのユニフォームやアメニティーなどの世界観を出しながら紹介しまして、そのデザイン監修と、コレクションの提供をしています。
あとこれは2005年、ブラウンというメーカーのデザインが変わってから55周年の記念に、ブラウンの本社から「こういう時期なので何かやってくれ」と直接話がきまして…

校長 す、すみません…それはブラウンの本社から、柳本さん個人に来たんですか。
柳本 そうです、個人に。ブラウンがどういう物をつくってきたかというのはその頃けっこう本でも取り上げられていましたし、見た人もかなりいると思っていたので、企業が戦後の高度成長期をどのように成長してデザインを普及させたかというところを紹介しました。製品だけではなく、会社の内部で何が起こっていたのか…それがどのように表に出てきたかというところを紹介したかったんです。だからこの辺には、会社で使っている名刺やレターヘッドなど、会社内部の人しか使わないようなものを全部展示しました。見えないところを見せたっていう展覧会だったんですね。
校長 個人に(依頼が)どうしてくるんでしょう?
柳本 それは…ドイツら辺でちょっと名前が知られてたっていうのがありますね。「ブラウンで、日本でやるなら、こいつだ」みたいなところがあったんだと思います。
校長 この辺から激しく混乱。
柳本 (笑)はい。
あと、お店の中で販売促進のために小さなギャラリーを作って集客するというのを、たまに手伝ったりするんです。

これはアメリカのアレキサンダー・ジェラルドというテキスタイルを中心に手掛けていたデザイナーがいまして、その人の作品と、もう少し踏み込んだ…例えばここにある女の子のは、娘さんの誕生日にジェラルド本人が切り絵で作ったもの。あとイームズから貰った手紙や、ホテルに滞在してる時に描いたラフスケッチや…そういうかなりプライベートなものも展示しながら、中で動いてるものがどういう風に表のデザインに影響を与えているかというところを紹介した展覧会です。
校長 …で、私物ですか?
柳本 ええ、全部私物です。
これも去年ですが、オーレ・エクセルという…二年前に90歳で亡くなってしまったんですが、スウェーデンの中でもけっこうおもしろい人で、日本で言えば相当巨匠クラスのデザイナー。

その人に直接会いに行って話をしている中で、版権をうちが扱わせてもらい、いろいろなものを作って啓蒙していこうと。今、古いものを持って来るのって難しいですし、啓蒙していくにはものを普及していなかなければいけないという考えが自分にはあるので。そしてその前に「その人だれ?」というところを紹介するために、こういった展覧会のようなものを行いました。
これはまた違うデザイナーなんですけど、スウェーデン鉄道という鉄道会社の…まあ日本でいうとJRみたいなところなんですが、そこのキャラクターの版権を取って、グッズ展開をしています。
校長 もちろん一元的には言えないですけど、航空機とか鉄道のグラフィックについていろいろとお詳しいので、マニアの方はそれで柳本さんのこと知っている人も多いですよね。
柳本 そうですね。こういう風にグッズにする事で、スウェーデンのデザインのおもしろさを広く派生させていくことをしています。
今まで色々培ってきて、これが昨年末に発売した本です。デザインと社会は実際繋がってるんじゃないか、だけど別々に考えられちゃってるところがある。この事実を検証しながらデザインと社会がどう結びついてきたかを紹介していく本です。

今まで出版もしてきましたが、どちらかというと物そのものを紹介していくことが多かった。ものの成り立ちとか、もう少しテキストで読めるように紹介した、初めての書籍になります。
校長 デザインと社会って、いまひとつ繋がって聞こえない感じもしますけど、そのあたり詳しく教えてください。
柳本 デザインってもともと社会的なニーズから生まれてるんだと思うんですよね。それを実はみんな気づいてないというか…デザインというと「形がかっこいいもの」とか思われがちなんですけど、実はここにあるもの全てがデザインされてるものだと思うんですよ。…もしかしたら「ここからまっすぐ進むと駅があります」という矢印も、デザインかもしれない。そう見ていくと、社会の中でデザインと繋がってるはずなんですけど、今は表層的なところに捕われてしまっているところがある。良いデザインがよく売れるっていうのは、形だけではなく、それをどんなふうに見せるか、告知するか…それらのいろんなデザインがうまくいけば、よく売れるんだと思います。
校長 よく校長がクラクラするのは、素晴らしくデザインされた新しい駅で、お釣りを忘れないようにって張り紙がしてあるとか。切符を取った時に、お釣りも忘れないようにできればいいのにと思います。
柳本 そうですよね。本当はお金を入れてボタンを押したら目が見えなくてもお釣りが出てくるのが分かれば、簡単に何の説明もなしにできるはずなんですけどね。今の時代、結局形を重視しすぎて、美的感覚の問題であったりとかデザインのエゴからそのように発展していってしまうんですけど…本来は社会的にあるべき、というところに基づいていくと、目をつむっていても分かるというのが原則なんじゃないかと思います。そういう物が残っていく。見直していくべきところですね。
校長 なるほど。
柳本 で、ここ最近KDDIという通信会社からiidaという新しいブランドを立ち上げたんですが、そこでプロデューサーみたいなことをしていまして、携帯電話の戦略などを、若手デザイナーを起用したりして動かしています。

校長 目に見えないほどの大きな流れも、誰かが作ってるんですよね。誰かが仕掛けてるし誰かが考えてる。
柳本 充電器で葉っぱみたいなのも、これは2万個作って3日ぐらいで完売してしまったんですが、そもそも充電器って黒いのしかないんですね。なんで色が無いんだろうとか、緑の携帯電話があるのに緑の充電器がないんだろうって疑問から始まっているんですが結局、充電器の会社がものすごく保守的で新しい冒険をしないってところがあった。そこから改革していこうという事をやっています。

校長 なんか変だなって自分の心の中で思っていても世の中が勝手に出してくれるわけじゃないですよね。どういう会議だったんですか?
柳本 緑の充電器は無いにしろ白い充電器が無いのはおかしいと。多分潜在的なニーズにあるんじゃないかと仮説をたててリサーチをしてみると、やっぱり欲しいって言うところが見えてくるんです。じゃあなぜそれが作れないのかとなると、企業の構造上の問題だったりするんですね。そこを打ち砕けるんであれば、やったほうがいいんです。そういう保守的な会社のおしりを叩いて無理矢理作らせたんです。そしたら爆発的に売れて、今ではその会社も積極的に動いてくれるようになりました。
校長 どんな方向で自分たちのブランドを作っていくかを、真ん中で一緒に考えていく事をしているんですね。

校長 まほうの絵ふでは柳本さんと一緒に何かしたいと思ってるんですが、問題は…柳本さんがどんな子供だったかということですね。
柳本 はい。ここからディープな世界へ(笑)
これは1973年に発表された「ワンダーランド」という雑誌なんですけど、これを3歳の時に買っていました。

校長 3歳の頃は読んでるんですか?
柳本 はい、一応読んでました。この編集長である植草甚一という人に、3歳の頃に傾倒していたんです。この人は簡単にどういう人かというと、サブカルチャーの神様のような人で、タモリがジャズに傾倒するきっかけを作った人でもあります。植草甚一が亡くなった後に、彼のコレクションをタモリが全部引き取っています。あと淀川長治の先輩で、淀川さんに映画を教えたのがこの人であったりとか…だいたい有名な人はこの人からいろんな知識を得たような感じで、60を過ぎて神様みたいになっていった人です。
校長 会場の皆さんの頭の上から何やらポアポアとしたようなものが立ち上がってきてますけども…(笑)だんだんついて行けなくなってきた校長ではありますが…
柳本 この表紙にも、筒井康隆とか片岡義男とかちばてつやとか書いてありますが、この人たちはみんな植草甚一のファンで、彼が雑誌を作るからって参加した人たちなんですね。で、植草甚一はジャズが好きだったこともあり、3・4歳のころからジャズにはまってレコードを買いあさるんです。
校長 それは柳本さんが買いあさるんですね?!
柳本 そうです。ブルーノートのレコードを中心に買っていきました。
校長 あのー…体型的にはあれですか、レコードの大きさに対して、柳本さんがこうゆう(大きな円盤を持つしぐさ)…
柳本 (笑)そう、そんな感じです。それを何枚か買っていくうちに「何か音が違う」と気がつくんですよ。これは何だろうということで、今度は周辺のいろいろなことを調べ出すんですね。そうすると一回目にプレスされたレコードと同じタイトルなのに、二回目以降にプレスされたものはレコーディングのスタジオが違うとか、そういうことを知っていくんです。そうすると「一回目のはけっこう貴重じゃん」って気づくんですね。
校長 ち、ちょっと待って…その「貴重じゃん!」ってのは、だいたい3歳後半から4歳にかけてですね?
(会場から笑いが)
柳本 そうです(笑)
その頃、レコードの価値はほとんどなかったんですよ。で、これって貴重だったら価値があるんじゃないか?と思い、自分で買ったレコードを売っていくんです。小学校一年生の頃から、友達のお父さんでジャズに興味がある人とかに、例えば100円で買ったレコードを「これはこれこれこういうストーリーがあって、こういう物だから、3000円するんですよ」って売ったりするんですね。他のレコードは100円でしか売れないんだけど、これは3000円ですよって。そういう、何か付加価値をつけると価値が上がるということをその頃知って。レコードを聴くだけではなくて、何かストーリーを知っていくというか…例えばどういう関係性があるかとか、レコーディングはどんな仕方だったかとか、どういう人が絡んでいるかとか…そういうことを知っていくことに、幼稚園の頃からものすごく興味が広がっていったんです。
校長 皆さんの顔がだんだん独特な表情になってきましたけども…
はい、まだつづきます。
柳本 次の転換期が、小学校1年生の時に『Made in U.S.A. catalog』というのが出るんですけど、当時アメリカのものってほとんど手に入らなかったんですよね。これを見るとアメリカそのものの匂いが感じられるみたいなところが、小学生にとっては衝撃的だったんですよ。

で、雑誌の最後の方を見ると、通信販売の仕方って言うのが出てたんです。これって日本で売ってないけど通信販売で買えるんだと知って、英語なんてわかんないのに辞書を引き引きしながら、マネーオーダーっていう小切手とかも作って、カタログ請求して、お金をつけて、また送って…今だったらネットで1週間ぐらいで届いちゃうのを、3ヶ月も4ヶ月もかけてひとつの物を手に入れるってことを、小学校1年生の時から始めて、自転車から服から靴から何から…もう全身、身につけてるもの全てアメリカから取り寄せてたという。
校長 ちょっとお聞きしたいんですけど、その船便で取り寄せたのは、先ほどのレコードのあがり(売り上げ)が…?(笑)
(会場爆笑)
柳本 そうですね、そこら辺を軍資金にして。(笑)
校長 おこづかいではなくて?
柳本 そうですね、軍資金でしている。当時まだ1ドル300円くらいの時代ですから、今とほとんど値段が変わってないんですよ。物価は違うはずなのに。ここにブーツがありますけど、これが当時4万円ぐらいだったんですね、つまり今の貨幣価値にすると12〜13万円なんですよ。だから当時小学校1年生で、12〜13万円の靴を買ってたという感じなんです。
校長 子供用もあるんですか?
柳本 子供用もあります。サイズはいっぱいありました。
校長 (観客の中の子供を指差して)できるぞっ!!(笑)
柳本 その影響でアメリカに傾倒していくんですが、いろいろとアメリカ文化がある中でおもちゃとか広告とかにすごく衝撃を受けて、いろんな雑誌などに出てくるアメリカグッズなどを全部切り抜いて、スクラップブックにしていました。英語でぜんぶキャプションをつけていくという。これも小学校の頃からやっていたものですね。

ぜんぶ手書きで、これがだいたい小学校1年生とか2年くらいの頃のものです。英語を辞書で引き引きしながら、どういうものかを調べて。
校長 ぬぁぁすごいな!動かぬ証拠でございます。
柳本 洋服とかのファイルもあるんですけど、こういう小学生の時に作ったスクラップブックで、だいたい7000冊ぐらいあります。
校長 ななせん!
柳本 小学校2年生のときにアメリカで作られた昔の食器にも興味があって探すんですけど、コレクター用の本がないんですよ。当時の昔の雑誌を集めて広告などを見て、こういう形があったっていうのをイラストに描いてサイズを表記して、いくらで買ったかチェックリストを作っていました。

このチェックしてあるのとか星が付いてるのは手に入れた物です。
校長 結構付いてます(笑)さっきレコードの話をしてましたけど、これも価値のある物は高く売れたりするんですか。
柳本 そうですね。例えばジェダイっていわれているガラスがあるんですけど、結構人気になって、カップ&ソーサーで300セットでだいたい2〜3千円ぐらいで買ってるんですよ。それがだいたい10年前くらい前、1個が1万8千円とかで売れるんです。だから差額は利益になっていきます。
校長 ぬぅ…返す言葉が見当たらなくなってきました、はい。

柳本 子どもの頃から集めてるジーンズについてるラベルも資料として集めてます。当時のカタログとかも手に入れて、こういう製品が他にもあったんだっていうのを知っていきました。

自分で買ったものはひとつひとつ、これはどういうもので、どういう特徴があるかっていうのもリストにしています。
校長 やけに細かいですね。
柳本 (笑)小学校3〜4年生の頃なんですが、自分のために買うならこんなものいらないんですけど、自分で研究した物の成果を誰かに見せたいっていう気持ちがあったと思うんですよね。歴史も色々書いてます。

校長 年表になっているものもありますね。
柳本 どこの工場が火事で焼けたとかそういうとこまで書いてるんですけど、それは、いろんな新聞を取り寄せて、自分で調べてつくっています。
校長 火事になるってことは製品が少なくなるので、ヴィンテージなんですか?
柳本 ヴィンテージワインてのがありますよね。ブドウの収穫量とか天候で価値が変わってくるというのがあったので、ジーンズもそういうのがつくれるんじゃないかと思い、小5の時に夏休みの自由研究にしました。過去100年ぐらいの綿の先物取引きの情報やリーバイスの株価など色んなデータを集めて、自分で分析した価値表を作ってみました。
校長 (笑)
柳本 例えば、さっきの工場が焼失して11個の工場が10個になっちゃうんですけど、生産量は年間でノルマ決まってるから、10個の工場で作らざるをえなくなると結構忙しくなるんですね。そうすると、クオリティが下がってくる。それでこの年は、値段が安いということになるんです。
校長 自由研究なんですよね?経済評論家みたいだな…小学校の先生のリアクションはどうだったんですか?
柳本 まったく分からなかったと思います。そういう意味では、やってきたことが評価されたことってないんです。
校長 褒められないんですか?
柳本 褒められたことはないです。逆にうざがられてました。「分からないことをするるな」って感じで、なんか子どもらしくないことをやってるって思われてました。
校長 だって役所の資料みたいですもんね、数字ばっか並んで…ぬぅーん、絶句。
柳本 これは第2次世界大戦中の空軍が着ていたフライトジャケットの年代の区別の仕方とか、記号の読み方とかをまとめたものですね。

これはナイキのスニーカーが、どういうバリエーションがあるのかを日々、描き足していったものです。

校長 あ、せっかくなので、お父さん世代のみなさんに、例の有名な話を…
柳本 あの話ですか。10数年前位にとあるスニーカーが爆発的に流行って、あまりの人気に社会現象にまでなったんですが、あれは私が仕掛けたものです。
(会場ざわめく)
柳本 いわゆる先物買いのようにたくさん買うことで一時的に品薄になる。メディアを使ってさらに需要を煽ってブームを戦略的に発生させる。そんな実験をしたかったんです。
校長 すさまじい人ですね(笑)商品はたくさん買ったんですか?
柳本 買いましたよ、日本に入って来る前の段階でかなり買っちゃったんです。
校長 それは愉快だったでしょう!(笑)ほれほれ〜みたいな感じで
柳本 (笑)まあ、そこで儲けようとかそういうことはないんです。メディアとその購買意欲がどういう風に直結して、どこまで価値が上がっていくかの実験をしたかったんですよ。
校長 だんだん会場の空気が変な感じになってますけど(笑)
どう反応していいんだか的な(笑)
柳本 他にも色々コレクションしてるんですけど、鉛筆とか、砂糖の袋とか、ホテルとかで貰えるラベルやカードキー、何でも貰ってきてしまいますね。

蚤の市とかで買うときもあります。世界中の宝くじとかロトくじとか。古本屋とかでまとめて手に入れたりもしています。

これはガムの包み紙とか…1つ1つは意味が無いんですけどね。でも、いっぱい集まってくると、この国にはこういう傾向があるとか気づいてくるんです。

校長 いっぱいっていうのはどれくらいなんですか。
柳本 このガムだと20万種類位ありますね。
校長 (笑)返す言葉がないですね。集めているものに脈絡が感じられない感じがしますけれども何かあるんでしょうか。
柳本 何か気になったものですね。あと、集めがいがあるもの。
これだけ集めてなんだって感じですけど、集めること自体に興味は無いんです。それをどう効果的にアウトプットして市場を作っていくか。これはマーケティングのための一要素でしかないんです。どういうところに心理が働いているのか…人間の心理を探っていくための一つの材料にしかなってないんです。
校長 価値の問題ということですか。
柳本 簡単に言うと、集めていくとだんだん場所とか時間軸、例えば10年前、50年前、100年前など何か傾向が見えてくるんです。これって何か意味があるんじゃないか?と疑問も出てくるんです。それで、その国のその時期に何が起こったかを調べていくと、そこで出てきたものと現象が一致してくる。例えば戦争が起こるとどういうものが流行るかとか、次の戦争になったときにまた同じものが流行ったり…社会現象とものがリンクしてるんじゃないかと思い、さらに歴史をずっと積み重ねて何千年もの歴史みたいなところにいくと、社会のバイオリズムが見えてくるんです。景気が悪くなると、みんなこういうものが欲しくなるとか、そういうことが無意識に働いてくるんですね。そのための資料なんです。
校長 iidaのことも根っ子は変わらないってことですか。
柳本 時代に応じてどんなものが受け入れられるかというのは変わってくると思うんです。さっきのブラウンも、50年代頃にはグッドデザインの象徴みたいな会社だったんです。その時期にあった、IBMとかオリベッティなどもグッドデザインの会社だったんですけど、今その会社がどうなっているかというと、ほとんど買収されてなくなってるか消えかかっています。だから今、グッドデザインって必要とされてないのかもしれないですね。今元気のある会社ってAppleとか任天堂だったりするんです。そこで感じるのは物ではなくて、例えばwiiや iphoneで何をさせるかってことを考えてる企業が、今の時代求められてるんだと思います。その意味で物の時代は終わってるのかもしれない。グッドデザインばかり作っていても食傷気味なんです。じゃあどうしたらいいのか。例えば携帯電話だったらそれを使って何が可能かを膨らませていくことが重要になっていく。そういう戦略を考えていくことも、こういった現象を見ながら探っていきます。

校長 日常生活について伺ってもいいですか。つーかいつ寝てるんですか。
柳本 25年〜30年近く、睡眠時間は約2時間ですね。それもちょっと体力を回復させるために寝るという…義務的にやる感じなんです。海外旅行のときは1週間一睡もしないで、30分寝てまた10日間起きてるってときもあります。
校長 何か会場に独特の空気が流れていますけども…う、羨ましいです。
柳本 うちでは週休5日って言ってるんです。5日遊んで2日働く。2時間しか寝ないのでだいたい1日22時間だとして、それでも1週間で44時間働きます。普通の一般の会社は8時間労働で5日働いたら40時間。それよりも多く働いています(笑)今日の話だと「特殊な人ね」って思われるかもしれないんですが、自分の中では才能は無いと思っているんです。あるとしたら、コツコツ集めることが飽きずにできたってことが多分才能なんじゃないかと思っています。
校長 恐れ入りました(笑)
柳本さんて何でもできるんですよ。運動が苦手かっていうと「体の使い方に興味があったので陸上をやってみた。結果は全国大会出場」みたいな。延々信じられない話が出てきますよね。政治とか宗教とかって夢ではないでしょう?なぜアートやデザインなんですか。
柳本 それは多分自分の中でもまだはっきりしてないんですけど…芸術って理解しにくいものだというところが一番大きいと思います。いちばんの興味って「人が何を考えてるのか」とか「なぜ自分が集めるのか」そこの気持ちが知りたいんです。
校長 それはこっちが知りたいです。(笑)
柳本 気持ちを知りたいから、そうやって人のしてることを気にしたり、自分の中に入り込んでいったりしてるんですけど、その中で芸術的なことが一番分かりにくんですよ。感性って、一番理解しにくいものなんですよね。「何々だ」って言い切れるもは簡単にわかってしまうことが多いけど、感覚の中で生まれるものって、なかなかわからない。
校長 柳本さんをえふでに招いてワークショップをしたいと考えたのは、幼稚園の頃など、技術が高いわけじゃないし、生活経験があるわけでもない。まっすぐなのでやってることは大人や研究者レベルなんですけど、入り口としては子どもレベルだという点です。ひょっとすると柳本さんみたいになれるかもしれない。要するに、こういう方向の教育もひとつ有りかもしれないな…そういう思いからスタートしたんですよ。教育について柳本さんにお聞きすると、例えば若手デザイナーの話など、いちいち頷かせられるんですよね。
柳本 若手デザイナーについての話をすると、例えばペットボトルをデザインしようと思うと、みんな表面のことを考えようとするんです。だけど、飲み口の部分のことは誰も考えないんですよ。例えばこれって、両手を使わないと開けられないですけど、なぜ片手で開けられるようなデザインを考えないのか。飲み口が口につくところだから一番重要なのに、なぜ誰も考えないのだろうと疑問に思うんです。外側にこだわりすぎて、重要なところを見逃しているんじゃないかと思っています。
校長 うーむ
柳本 自分が日常に溢れているものに興味があるのは、その中に何か気づくべきものがあるんじゃないかという思いがあるからだと思います。例えば道のガードレールに興味のあるデザイナーがどれだけいるんだろう。日常の中にいくらでもあるもの…例えば牛乳パックを見て、このデザインってかっこいいなとか、なぜこっちのほうがかっこいいのかなとか、なぜ思わないのかなって思います。そういうところで、形にこだわりすぎてるんじゃないかと感じるんです。
校長 柳本さんは、本質は何なのかをずっとまっすぐに考えていらっしゃるんですね。この後、えふでとどういうことを一緒にやっていくのかについて少しお話しましょう。柳本さん、最近一番興味のある事はなんですか?
柳本 今、一番興味があることは「オバちゃん観察」オバちゃんて普通に考えるとクリエイティブじゃなさそうなんですけど、例えばものを選ぶときに、なんかこう、指で押してみたりとか、急須があるとふたをあけてみたりとか、他のおばさんと話してても手だけ動いてたりするんですよね。
校長 (笑)
柳本 今の人たちってけっこう見た目だけで選んでることが多いんじゃないか。例えば賞味期限とか、あとはスペックだったりとか、これはこういうブランドだとか、そういうとこだけで選んでるんじゃないか。でもおばちゃんはたぶん身体感覚を使って、体で無意識の中に認識させようとしてると思うんですよ。
校長 ぎゅっと押して「あら、へこむわ!」みたいな。
柳本 そうそう、弾力によって鮮度があるなとか、においを嗅ぐとか、体の五感を使ってたぶん自分の中では言葉にできない、意識に出ないことを奥の中で考えてるんですよ。
校長 いわゆる暗黙知ですね。
柳本 そうです。その中でたぶん、あ、これは買いだなって思ったものを買っていくんですよ。それが本能的な購買意欲ってことだと思うんですよね。人間の潜在意識って、97%と言われてるんですよ。でもその97%がわかってない。もしその中で起こってる現象の1%でも知ったら、ものすごいことが起こると思うんですよね。
校長 校長としては柳本さんのスーパー幼児ぶり、スーパー小学生ぶりから、自分や自分の子供に何ができるだろうとか、どう努力できるかをみんなで考えたかったんですよ。えふでで10月、11月、12月にワークショップをして、最終的には年明けに展示をしようと思っているんですが…そのことも含めてお話をしていたら、想像以上に混沌としてきてしましました。
柳本 今の話にもあった「オバちゃん観察」から、それが購買意欲にどう結びついているのかっていうことをワークショップでやっていこうと思っています。まず、闇雲にリサーチするところから始め、そのリサーチ結果をみて傾向を分析していきます。色々なデータを集めてこんな傾向があるとわかったら、それを仮説としてもう一度実験してみる。あー、やっぱりこうやって買っていくんだ!ってことを実証していきたいと思っています。ものを選ぶこともクリエイティブだと思うんですが…一連の観察の中で、クリエイティブが生まれる瞬間を知ることができるんじゃないか。デザインされたものだけがクリエイティブじゃなくて、日常の中にクリエイティブが潜んでいて、それをいろいろ検証しながら探り、クリエイティブが表に出てくる瞬間を知るっていうところに最終的に着地できたらと思ってまいます。
校長 相当な観察力がないと難しいでしょうね。よく思うのは外科医とかお医者さんは大変ですけど、小児科はさらにたいへんですよね、言葉しゃべってくれませんし。獣医さんとかはもっと大変でしょう。やっぱり漫然と見ていてもしょうがないですからね、こっちから見ていて、向こうのものを引き出してくることが必要だと思うので…
あと子どもに対しては、大人に対する以上に翻訳が必要だったり、なるべくシンプルにしたり、本質にまっすぐすることが必要です。えふでとしてはそんなことを押し進めてみて、柳本さんとも協力し合って、おもしろいことができたらと思っています。
ふわふわアニメ
2009年11月8日(日)AppleStoreSapporoでのキッズ特別授業「ふわふわアニメ」の撮影が終了しました。幼稚園から小学校2年生の子どもたちがデジカメを使ったコマ撮りムービーづくりにチャレンジ。「ふわふわ」の正体はきれいな色がついた羊の毛。実はフェルトづくりの材料になるものです。撮影会では、みんなでちょっとずつ、ビミョーに、じりじりと動かすってのがすごく難しかった!ふわふわしてて形が決まらないもんだからなおさらね。しかしできあがった作品を見てみると「お!なかなかイケてるじゃないか」やったぜ!えっへん。


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三匹のこぶたキャンプ
外の世界に送り出した。
〈物語・三匹のこぶた より〉
長男はワラの家、次男は木の枝の家、
三男はレンガの家。
さてえふでの子どもたちの場合は…
こぶたミーティング
ぬぁんと自分たちが泊まるテントを自力で作るのだ!
あまりに過酷なため実際にキャンプに行く前に
綿密な打ち合わせが必要であろう。
ということでまず前日に『こぶたミーティングの巻』。
小学校3年生から中高生の子どもチャレンジャーたちが
まほうの絵ふでに続々と集結。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
8月2日
9:30 教室に到着次第、なぜか写真撮影。ボードの前に立たされ、何のためなのか意味不明のまま、有無を言う隙もなくパチリパチリと撮られていく。

10:00 こぶたミーティングスタート
まずはじめに、校長からはじまりのあいさつ。
冒頭「こぶたキャンプが心配な人は?」
シーン

「楽しみな人は?」

はい、みなさんお楽しみな様子で…(今だけだぞ…)
10:30 テントの可能性を探るブレスト。
かたい頭をふにふにするのだ。現実的に可能かどうかは別にして、考えられる限り形を描き出してみろ。制限時間は5分間。

全体の絵を貼り出してチェック。
いっぱい出たが、意外と似たようなアイディアが多いことに気がつく。

11:00 現場を知る
現実的にどんな環境に建てるのか、スライドショーで森の様子を見る。
「明るいキャンプ場!…と思いきや、ワシらのスペースはこの奥の奥ですからね!」まさに森の奥。

当日与えられる資材の発表。
まずテント用のシートは1チームにつき10m×10m。一応防水。

縄は各チーム8m×3束。
「よく締まるし、困ったときのたき付けにもなる」という校長おすすめの一品でございます。

支柱には竹でございます。
「ペグなんぞ現代的なものはありませんからね!」
切って使えっつーこと。
長くて太いのが2本、短くて細いのが9本。
ちなみに竹はそのまま燃やすと危ない。「まさに爆竹」要注意。

その他、ハト目、新聞紙、ティッシュ1箱…ガムテープは各チーム25m。「ええっそれだけ?!」という子どもたちのリアクションを受けて、今回のこぶたキャンプのルールの説明。こまった時のためにイエローカード(通称:お助けカード)を各チーム2枚配布する。足りないものがあったらカード出すがよい。さらに「いよいよもうだめだ!」という時にはレッドカードを出す。つまりそれでギブアップ、ワシらと一緒に屋根のあるとこで寝ることになる。そのチームの全員がゲームオーバーつーことね。
11:15 チーム分けの発表。
リーダーはこの5名。「たのむぜ!」

最年長のリーダーの仕事は、総監督と、校長への報告義務。
次のサブリーダーは、実制作の中心になる、テントの建設責任者ぞな。
サブサブリーダーは、散らばりやすいチームの用具や資材を徹底管理。
最年少の逆リーダーの仕事は…「メンバーからとにかく愛されることでございます。」うまくいかないと、チーム内がギスギスしてきますからね。足を引っ張らないのはもちろん、困ったときのムード作りも年少者のだいじな仕事。
11:30 模型づくり開始
わかりやすいように、すべて10分の1縮尺に統一。
「模型にリアリティを持たせるため、自分の10分の1人形を作りなさい」おお、写真はこのためだったのか。

ワシも登場。「ハイどうもー」

12:00 昼食 (食べ終わったチームからすぐに模型作りつづき)

途中、リーダーをひとりずつ呼びだして進み具合の確認。
「順調!」

「問題ありません」

「全然言うこと聞いてくれません…」

おいおい、まだキャンプも始まってないぞなよ。苦戦しとるのう…がんばれよ!
13:30 テント模型のプレゼン
要点は、テントのサイズ、耐候性、作りやすさの3点。

各チームの「しゃべり担当者」の発表後、まわりからズバズバと鋭い質問・意見が飛び出す。
「雨降ったらどうするんですか」
「せまそうですが、荷物の置き場所はあるんですか」
「この支柱はどうやって立てるんですか」

どのチームも今いちリアリティがなかったことが判明。
ということで1回目のプランは全チームともほぼ撃沈。
そこで写真を見直しつつ、明日の天気予報を確認。
実際にどんな状況になるのか具体的に想像すると…
「地面は草でふかふかして建てにくい」
「明け方は黙ってても冷える」
「蚊が出るかも」「露がつく」「体調崩すメンバーがいたら…」
崖っぷちになるであろう自分たちの姿が浮かび上がり、はじめて青くなる子どもたち。
「ぬぅぅ…いざという時の逃げ道を考えろ!」
14:30 今度こそ本気の模型づくり。

作り方の手順やタイムテーブルも各チームで作成して提出。

しかし…みんな屋根に入り口つけちゃうんだよなー
人も入れるが雨水もウエルカムぞな。大丈夫なのか?!
というところで今日のこぶたミーティングは終了。
明日の注意事項や持ち物、バスの出発時間等を確認して解散。
えふでのこぶたたちの運命やいかに?!
こぶたキャンプ
8月3日(月)
9:00 まほうの絵ふで前からバス出発
前日に遅刻厳禁と念押しといたため、遅刻者ゼロ。でかい荷物背負ってやる気満々。しかし多少浮かれぽんちきな空気あり。

移動時間を使って、性格診断テスト。50の設問に答えるエゴグラムっつーテストなんだがな、これがよく当たるのだ。自分の性格を客観的に自覚できるから校長的には超おすすめ。今回、運命を共にするチームのメンバーがどんな性格なのか、よく把握しとけ!
10:50 キャンプ場到着。
天候はくもり。気温はほどほど。

しかし一足先に着いて現場を下見した先生から、バッドニュースが…「前日の雨のせいで、地面がゆるくなってます」
浮かれた空気が一気に凍りつく。
テント立つかどうかギリギリの状況なのに…これは痛いぞ!
11:30 昼食もさっさと済ませ、資材の配布。
用具・資材の管理は各チームのサブサブリーダーの仕事。

足りないものや紛失物なんぞあったら責任重大。後からもらうには各チームに2枚だけ渡してあるイエローカードと引き換えなのだ。貴重なカードをアホなミスで失うわけにはいかん。荷物のチェックも超念入り。
11:50 森へ移動
川遊びを楽しむ子どもや立派なテントを張った家族づれを横目に
緊張した面持ちで黙々とリヤカーを押すワシらは全く別世界。
奥へ奥へとひたすら進む。例えて言うなら疎開中の子どもたち。

12:00 場所決め
現場に到着後、まずはテントを張る場所の検討。

ちなみにえふでの場合、場所取りジャンケンなどいっさいナシ。前日のこぶたミーティングから、集合の早い順、メシ食うの早い順、提出物の早い順…など細々とチェックしてポイント貯めてたのだ!もちろん点数高いチーム順に優先的に好きな場所を取ることができる…こぶたキャンプ中の行動はいちいちポイント対象になっとるもんだから油断大敵。最年長のリーダーは「早くしろ!」「集合だ!」自分たちのチームが悪条件にならないよう、常に気が抜けん。
12:20 テントづくり開始
前日に作った模型と施工手順の計画表をもとに制作スタート。
まずはじめに支柱を組むチームもいれば

広い場所に出てシートを切り出すチームも。

こちらは地面に差すための竹を加工。

テントの制作はサブリーダーが中心。と言えどもこの規模の制作はひとりでは到底ムリ。柱をおさえてたり、シートの端を持ったり、走り回って資材や道具取りに行ったり…ちんまい子もちんまいなりにやるべき仕事が山ほどあるのだ。

肩車して仕事させるとは!リーダー、ご苦労。
14:30 一足早くテントらしき形になったのは、男子ばかりのEチーム。ここは前日のこぶたミーティングでも仕事が早かった。しかしその過程を見ると…

骨組みが弱いのにムリヤリ作業をすすめたため、崩壊の危険ありとの判断。そこでテープで固定しようとあれこれ試みたようだが…結果、「テープが足りなくなった!」やむを得ずイエローカード片手にリーダーが校長のとこにダッシュ、予備のガムテープと交換。初の『お助けカード』の登場に他チームもざわめく。
あれこれシュミレーションしたはずの計画だったが、この辺りから「やばい」「無理がある」と他のチームもプラン通りにいかない現実に悩み始める。一時小雨も降り始めるが、そんなの気にしてられん。

途中で話し合いを重ねつつ、大小様々な計画の変更。走っては作り、作っては考え、考えては走り…夕食も作らねばならんから、16:30にはテントを完成させたいところ。さらに日の入りは18:45。夕食後、暗くなってからの森での作業は不可能に近いから…後がない!
15:15 経過報告
まだ完成形が見えないチーム多数…の割に
「大丈夫です」「どうにかなると思います」
ぬぉー、粘る粘る!
意地でもイエローカードを出したくないリーダーたち。

まぁ…まだやれるっつーなら手出しはせぬ。作業再開!
16:00 続々と各チームのテントが立ちはじめる

「せま!」「隙間だらけ!」「虫入るぞ?!」「寒くねーか」
先生たちのツッコミも何のその。
「平気!」「これから塞ぎます!」「二重にする!」
中には危なっかしいのもあるが、こっから仕上げぞな。
何だかんだ言いつつみんなどうにかできそうだ…と思いきや、
ん?ひとつだけ気になるのがこのチーム…

おーい。おまえらだいじょうぶか?
16:15 いよいよ観念した最後のチームのリーダーからイエローカードが。「校長、手伝ってください」計画を聞いてみるとプランは悪くない。前日の夜、建築家のお父さんに相談してきただけあってしっかりしとるのだ。しかしいざやってみたら支柱を地面に固定できない。さらに強度を高めるためロープを木の幹に巻き付けて張ろうとしたが「チームのメンバーが手伝ってくれない」ぬぅ…リーダーの必死さとは裏腹になぜこうもまとまらんかこのチームは!

ギリギリの時間まで全員に手伝わせ…

やっとこさできたのがこれ。出入り口も窓もないが…多少の雨風ならしのげる。まぁ一晩くらいならがまんできるであろう、側面のシートをまくり上げて出入りしろ。これで完成とする!
で、他のチームの仕上がりはと言うと…

じゃじゃーん
一応全員寝られるようだな。高さがなくて立てないが、これでも当初のプランよりは大きくなったんだと。たいそうご満悦。
こちらも現場に来て床面積を広げたチーム。

うーむ。寝床ができて、喜びを隠せないご様子。
飛び上がるのは無理なようだが、ゴロゴロするスペースはあるようだ。
そして早くに形ができてたこのテントは

ディティールまでしっかり作り込んで「中も快適!」と太鼓判。
そしてなんと言ってもちんまいのがここ!

全員が寝たらまさに「すし詰め」ってやつよ。いいのかこれで?!
途中で到着した坂上シェフもテントの中覗いて唖然。「ありゃー!」

まあここはチームワークも抜群に良かったようだし
どうにかして寝るのであろ…これにて全員完成とする!
しかし…問題はこっからだ。
果たしてこの環境で大きなトラブルなく朝を迎えることができるのか!?
17:00 夕食
次に降り掛かる問題が野外料理。
全チームに同じ食材を渡し、一言「自力で作れ。」
これが夕食と翌朝分の食材。

前日のミーティングでは食材について全く知らされていない。
各チームで献立の相談をしつつ「米…炊き方わかる…?」
途方に暮れつつも、とりあえずは火起こしぞな。

これがなかなか思うようにいかない!
腹は減る…火はつかない…腹減った…メシまだか…
しかし「イエローカードだけは渡したくない!」
ここでまた粘る粘る…

予定時刻を大幅に押しつつ、やっとこさ炊けたご飯は「固い!」
アルデンテじゃあるまいし…そのまま食うにはさすがに…
「雑炊の作り方教えて!」
先生にイエローカード出して泣きついたたのは1チームのみ。
他は意地と根性でそのまま食べるとな?!
男子チームなんぞ塩かけてでも食ってたっつーから…そりゃ見上げた根性だ!トウモロコシ焼いたりじゃがいもゆでたり…つーかそこまで無理せんでもイエローカード使えよ、おい。
19:30 恐怖の森の怪談
すっかり日も暮れたところで「虫の害、夜の寒さに加えて、えふでのみなさんに恐怖をもうひとつ…」
でたぁ〜!坂上シェフの『森の怪談!』

こえー!まじこえー!
さらに『天国か地獄かくじ引き大会!』
後でもめないよう、各チームで愛されるのが仕事であるはずの逆リーダー(最年少)がくじを引く。女子チームにはそれぞれ…
花火が出ました!「わーい!」

夜食用のおやつでございます!「やったー!」

穂別メロンでございます!「わー!食べていいの?!」

先生たちも未だに不思議なのだが、なぜ揃ってこの当たり方?
一方、さいごのさいごまでテントができなかった男子チームは…
「恐怖の森のおつかい…暗闇にあるスイカを取ってこい」
どこまでもツイてないぞこいつら…地獄ぞな。
「あっちの森(スイカがある方)って真っ暗じゃん!」いやだいやだと泣きつき、あげくの果てに「吐き気がする」と脱落者1名。

残りのメンバーとジャンケンで負けて引率をするはめになった坂上シェフ、ひとかたまりになって出発。テント作りではあきれるほどチームワークが悪かったはずだが、この時ばかりはリーダーにしがみつき、どうにかスイカゲット、任務クリア。ふう〜
さらにもう1チームの地獄は「テントの中で百マス計算…?」
えふでに通う学力の高いみなさんのため、足し算、引き算も二桁、かけ算も二桁…やってもやってもなかなか終わらん量を用意いたしました!
小3、小4の逆リーダー・サブサブリーダーは早々に脱落。眠い目をこすりながらも最後まで終わらせたのは中1のリーダーと小6のサブリーダー。今日一日ちびっこたちを動かし、テントづくりで疲れ果てているはずのこの2名、全てを終わらせたのは夜中12時を回ってたそうな。さすがの根性、ご苦労!

そんなこんなで消灯後のテント。夜の森は真っ暗でございます。
まるで難民キャンプ的ではございますが…

中ではこの通り。どのテントも中で子どもたちがぐっすり熟睡しておられます。ハードなテントづくりでいい具合に疲れてたのでしょう。

技術的に大きく作れなかったのが幸いしてか、小さなテントに子どもがぎっしりで熱気むんむん。寝袋から蒸気上がっとったのもいたくらい…そのまま朝方の冷えも何のその。全員無事に朝を迎えました。

何でしょうこの神々しい朝の光は。
今回のこぶたキャンプ、テント作りの技術はさておき、意地と根性、
そしてチームワークという精神面は随分鍛えられたに違いない。
「良質なストレスは子どもを育てる」
えふでの考えをストレートに実施した形になりましたが、関係者の皆様いかがでしたでしょうか。天候その他の様々な幸運にも恵まれ、何より出発前は随分心配されたであろう親御さんたち、よくぞ思い切って預けてくださいました。子どもたちはわれわれの予想・想像以上に本当にひたむきにがんばってくれました。えふでに対する親御さんの期待と信頼があっての活動でした。重ねて感謝をお伝えします。







