ヒトって使わない機能は、意外に簡単に消失してしまうんじゃないか?ここ数年、校長がよく考えることのひとつです。この何十年かで食べ物が柔らかくなって、子どものアゴが小さくなったという報告も聞いたことがあります。そこまで長い時間をかけなくても、たとえば手や脚を動かせないように固定しておけば、1年もしないうちに自由に使えなくなる気がします。ヒトの進化の中でも、機能を失う方向への変化って、自分たちが考える以上にかんたんにできちゃうのかもしれません。
もしかしたら人間同士のコミュニケーションの能力も同じなのではないでしょうか。「人の気持ちがわからない」とか「子どもがオレ様化しつつある」なんて意見もありますが、もしかすると、そういった機能を使わないですむうちに進化(?)していっているだけなのかも。たとえば、気持ちを「推測される」側に立つことはあっても、他人の気持ちを「推測する」側に立つ必要がないとしたら…そのちからが無くても困らないのかもしれません。
しかし、子ども同士のやりとりはもちろん、大人の仕事やどんな日常生活にも、他者とのやりとりや交渉ごとはついてまわります。そんな対人面の能力はどうしたら鍛えられるのか?
わかりやすいものはまず、スポーツ。個人プレイよりも、やはりチームで味方と相手の状況を読みながら動く競技はなおいいでしょう。もうひとつは…ゲームがいいのだそうです。それも画面に向き合うハイテクゲームではなく、ヒト対ヒトの超アナログのものが。詳しい方もいらっしゃるかもしれませんが、実はアナログなあそびをするとき、コンピューターゲームとは違う脳の部位が活性化しているという研究結果が出ているそうなのです。相手と言葉にできない微妙なことがらを読み合って勝負する。ブラフ(はったり)や勝負の流れを読むちから、いわゆるノンバーバルコミュニケーションが鍛えられて、対人面の洞察力を磨くのにたしかに役に立ちそうです。スポーツもゲームも勝負事という点で共通していますが、勝ち負けがあるものはやっぱり真剣になります。観察力やコミュニケーション能力全般が鍛えられ、第六感みたいなもの…例えば感じたことを言語化する能力や、抽象的なことがらを考える能力にまでつながっているように思います。
人と人をつなぐデザインのひとつの答え。
そんなふうに子どもの遊びについていろいろと考えていたら、ロードアート「ツリー」でアートディレクターを務めてくださった柿木原政広さんから「ゲームブランドを立ち上げた」というお知らせをいただきました。ゲームデザイナーのトゥルーリ・オカモチェクさんとおふたりではじめたのが「Rocca Spiele(ロッカ シュピール)」。前々からゲームには興味があったそうなのですが、柿さんが選んだスタイルは昔ながらのアナログなカードゲーム。モニタに向かって遊ぶものではなく「人と人をつなぐものに関わっていきたい」というアートディレクターらしい見方にいたく感心しました。Roccaはトランプのようにルールを決めて遊ぶほか、視覚的なおもしろさも抜群で、立方体のカードをつないで平面の積み木遊びができる。これはえふでの子どもたちにぴったりだと思い、2月のバレンタインシーズンにおふたりに来ていただくことになりました。
北海道初上陸となるロッカ大会では、小学校1年生から6年生のえふでの子どもたちに、この時期ならではの「手作りチョコレート」を懸けて熱い戦いをくりひろげてほしいと期待しています。会場は昨年もお世話になったスターバックスコーヒーさん。お父さん・お母さんたちもコーヒー片手に、子どもたちの本気のゲームを観戦することができます。全国各地で子どもを対象にしたロッカ大会のほか、大人が集うロッカナイトも大いに盛り上がっている様子。こ、これは新たなブームが到来かも…参加者全員にRoccaをプレゼントとのことなので、遊び方を覚えてぜひご家庭でも楽しんでください。
そして多かれ少なかれ、子どもは自分に関係がないことに興味がありません。だけどもしかすると、この先の勉強であれ、研究であれ、商品開発であれ、「自分がどう思うか」「自分がどう感じるか」ということではなく「他人が何を感じているか」を考えることを面白がれる子どもに、いろんなチャンスがやってくるような気がしてなりません。ぜひこの機会に子どものコミュニケーション能力についても考えてみませんか。