2011年7月 かめのなみだ

 えふでのロードアートって、ふしぎですよね。描いた絵そのものももちろん作品ですが、毎回決められた時間内にあとかたもなく消してしまうという、ある意味はかなさを含んだプロジェクトです。大きな作品ですから、絵の中に入って実際に制作した子どもたちは「とにかくいっぱい塗った」とか「すごくたいへんだった」など制作の思い出のほか、道路のでこぼこした手触り、夏の日差し、ずぶ濡れになる冷たい水…など、身体的な記憶が強く残っているかも知れません。

 活動後、しばらくたってから初めて作品の全貌がわかるというのも、ロードアートのおもしろさといえましょう。その意味で、写真や映像などの「残る作品」の方も、手を抜けない大切な要素です。今年はなんと、ロードアートが映画(ショートムービー)になる!これまたびっくりな企画を考えています。協力してくださるのは、えふでっ子たちにはすっかりおなじみのイラストレーター・大塚いちおさんと、まほうの絵ふでの活動には初参加となる映画監督の永田琴さん。琴さんはあの岩井俊二監督のもとで助監督を務めた後、「Little DJ~小さな恋の物語~」や「渋谷区円山町」といった長編映画、キットカットのCMなど多くの映像作品を監督・編集した女性監督。繊細でよく気がつく、サービス精神あふれた方です。何よりも、バイタリティーがすごい!まわりの人に「一緒にものを作っていきたい」と思わせ、みんなの気持ちを束ねる力に優れています。現場のグラフィック面では大塚いちおさんが、そして最終的に残る映像作品は永田琴さんが中心となって撮影・製作を進めていきます。他にも、各方面で活躍中の多くのクリエイターのみなさんがえふでに力を貸してくれます。

 そんな豪華な顔ぶれで開催するロードアート『かめのなみだ』では、チョークで大きな絵を描くことに加え、撮影の演出という要素が加わります。主役となるのは小さなかめ。離ればなれになったかめたちが、あちこちを旅して回るストーリー。「一歩一歩、自分の進行方向を見つめて前に進もう」という琴監督から子どもたちへのメッセージが込められています。絵はもちろん、大道具・小道具などの製作やかめの細かな動きなど、監督と一緒に作り上げていきましょう。

 昨年のロードアート『まきば』では、一気に参加者が増えてワシらの方が驚いたくらいですが、やはり核になるのはえふで会員のみなさん。あれだけの規模にもかかわらず、当日現場に集まったみんながクオリティの高い制作をすることに対して「すごい」「驚異的」という賞賛をいただいています。さらに全国各地から「自分のところでもロードアートをしたい」「コツは何ですか」などの問合せが数件寄せられているのですが、運営のノウハウは伝えられても、えふでのみなさんの一体感だけは真似できないだろうなと思います。最終的には参加するみなさんのがむしゃらながんばりが必要なんです。

 今年のロードアート『かめのなみだ』の活動にあたり、お父さん・お母さんにお願いしたいこと。大勢で取り組む共同制作ですから、撮影をとりまとめる監督にぜひ協力してください。そして全体の絵のクオリティをあげるのは、やはり大塚いちおさんの存在。小さな子でも、自分がしたいことを考えるより「みんなのために何ができるか」を考えられるよう、まわりで見ている大人たちもぜひ後押ししてあげてください。

 また今回、映画製作というジャンルにまほうの絵ふでの子どもたちが触れていくことによって、もしかするとこの先「映像で表現したい」「映画を撮りたい」という想いも生まれてくるかも知れません。ストーリー、場面構成、音楽、大道具・小道具、演出、編集…という複合的な要素がある映像作品。おもしろいことこの上ないでしょう。そして映画の特徴として、監督の主観や価値観が大きく影響していくのも事実です。この夏、永田琴監督が子どもたちのがんばりをどう受け止めてくれるのか…作品の上映会もお楽しみに!