2012年4月 もの作りが教えてくれる大事なこと

年度末に、キッズコースではえふで史上初!のこぎりを扱う授業を行いました。

 角材を切ってカード立てを作るという、切ることだけに焦点を絞った大変シンプルな授業です。制作前に確認したところ、ほとんど全員といっていいくらいの子どもたちが、のこぎりを使った経験がありませんでした。その存在は知っているものの、まだ背丈の小さな子どもたちにとって大きなのこぎりは「触れてはいけない危険なもの」のひとつだったかも知れません。

 さてワシがいちばんはじめに教えたこと。それは「しっかりおさえる」。実は、切る・削る…どんな刃物でも、どんな材料であっても、素材加工の基本は材料の保持・固定。加えた力を逃がさないことで、無駄なちからを入れることなく、加工に専念することができます。でもキッズは木を押さえると、切ることがお留守になってしまう。切ろうとがんばればがんばるほど、押さえることに意識が働かなくなりがちです。そこでまずはクランプ(ワンタッチ式の万力のようなもの)の使い方から。木のブロックをいろいろな角度からはさむことで、道具の仕組みを覚え、力加減を知っていきます。

 そしてようやく慣れたところでのこぎりの登場。はじめは保護ケース入りの状態で持ち方、手渡し方を練習していましたが、ケースからむき身の刃物が見えたとたんさすがに笑いが消えます。道具の扱い方を学ぶという意味で、自発的に気をつけようと考えさせるためには、きちんと心理的な圧迫感を与え、真剣に向き合うことを要求しなくてはいけないと思います。今回の授業でのこぎりを使う際、キッズコースの子どもの身体のサイズから言ってやや小さなものを使わせることも考えたのですが、結論から言うと大きな大人用で、よく切れるものを選んだことが教育効果を高めてくれたと思います。プロ向けの用具は持つとやはりすごみがあり、手に持つとけっこうずっしりきます。そこには心理面だけではなく、物理的な理由もあります。キッズは押しつけながら引くという複合的な行動をするのが難しいため、ある程度の自重があるのこぎりのほうが、「引く」行為に集中できたようです。その意味でホビー用ではなく、プロ用のしっかりしたものを使ったのは正解でした。真剣さがないと危険ですからね。 

 3月はキッズだけではなく、ジュニアコースでものこぎりを使いました。「ジュニアになるとみんなすごく上手で、えふでの子どもって本当にすごい!」…と言いたいところですが…現実はまだまだ課題が山盛り!そしてワシは怒鳴りまくりです。「身体をねじるな!」「自分のことより、まず他人にケガをさせるな!」「バカたれ!台を切るな!」すみません、えふではぜんぜんファンタジックな教室ではなく、ただただリアル。できてないものはできてない、とはっきり認識させます。子どもたちの様子を見ていると、身体をすっと伸ばし「腰が入っている」状態にすることがなかなかできない。切りにくい、おさえにくいなどから身体をねじってしまうことが多く、それを直すことができないのです。緊張感があるうちはまだ良いのですが、慣れたり疲れたりする頃にはぐにゃぐにゃし始める。今は学校では「気をつけ!」ってしないのかな?何か関係あるような気もするが…

 で、上手くできない子には体の使い方から教えることにしています。木をしっかり押さえていることを確認し、「いいか、軽く持てよ!」「まっすぐ動かせ!」と言いながら、肘やのこぎりの柄のはしを持って、子どもが切るのを補助してやる。しばらく動かしたら「いいかー、離すぞ、離すぞ」という具合でね。補助輪なしの自転車乗るときみたいな感じです。

 さて、今回キッズの授業では、4歳児も5歳児も、どうにか結果的に全員が木を切ることができました。力がないとか、体が小さいとかは正直あまり関係ありません。ジュニアの子どもたちもうまい・へたはさておき、自分が使える道具の選択肢のひとつに、のこぎりを加えても良いでしょう。しかし、よりうまくなるにはどうしたらいいか?ワシはすごく考えました。みんな不思議と「切りにくい、やりづらい」ってことを我慢しちゃうんですが、なぜ体や道具の扱いをもっと工夫しない?というか、我慢しているのではなくて…もしかして、やりにくいとあんまり気づいてない?

 「快と不快」はある意味一体で、不快感を強く感じることができないと、達成感も感じることができないという説があるそうです。世間一般で言われるように、よい時は褒め、たとえ間違ったとしても責めない…というのでは、正解することでの達成感を弱くする、とも。正解に対し快を感じるためには、間違いを自覚し、不快に思う刺激が必要だと指摘しています。校長は「褒めて育てよ、叱るのはダメ」という風潮にはどうも納得できない。常日頃からただ褒めるだけではなく、ダメな部分を指摘した上で、うまくできたことを褒めることの方が、明らかに学習効果が高いように感じています。客観的でぶれないジャッジをするのは、指導者として、それ以前に経験のある大人として必要なことでしょう。

 ということで、4月から気を引き締めて新年度!びしばしいくぞ。からだがちんまい分、押さえられない、届かない、外せない、締められないなど、思ったようにできないと感じる場面もあろうが、ワシも子どもの頃はそうだった。大人がうらやましく感じたもんな。しかしからだが小さいときこそ、工夫のチャンス。さらに上手にできないか、自ら考えよ。ワシに叱られて不快に感じるのも健全なしるし。えふでっ子よ、賢くあれ!