2009年11月 みんなのコーラス

「すばらしい作品でした。優しい雰囲気が出ており、見ていて心地よくなります。画面各部のバランスがとてもいいですね。ですが、やわらかく表現しようと注意しているのはわかるのですが、残念ながら描写がはっきりしなくなるところがあり形態を理解しにくくなっていました。明度の高い色がかたく響くところがあるので注意しましょう。仕上げの表現には勢いがあるのですが、少し表現が荒っぽくなるところがありました。気をつけるともっとよくなるでしょう。」
 …もしも校長が子どもの絵に対してこういう講評をしたら複雑な気持ちですか?やっぱりいや?ついていけないなあと感じますか?
 ふふふふ、実はですね…これはNHK全国学校音楽コンクール出場校、小学校の部の演奏に対する合唱指揮者(たしか清水先生)の講評を、ちょっとそれらしく美術っぽく言い換えたものなんです。NHKラジオ「みんなのコーラス」を聞きながらの、うろ覚えのメモ書きからで申し訳ないのですが、実際はこんな感じなのでした。
「すばらしい演奏でした。優しい雰囲気が出ており、聞いていて心地よくなります。各パートのバランスがとてもいいですね。ですが、やわらかく表現しようと注意しているのはわかるのですが、残念ながら発音がはっきりしなくなるところがあり聞き取りにくくなっていました。ソプラノの高音がかたく響くところがあるので注意しましょう。終盤の表現には勢いがあるのですが、少し表現が荒っぽくなるところがありました。気をつけるともっとよくなるでしょう。」
 一連の講評の最初には、曲についての聞きどころや作曲者の意図についてのひとことがあって、それからいいところをほめて…と続きます。しかし「ですが(!)」とか、「残念なのは(!)」などのことばに続いてモーレツに具体的、それでいてめちゃくちゃ辛辣な講評が続きます。どっひー!さっすが全国大会。もともとは、つけっぱなしのラジオから聞こえてきた「みんなのコーラス」。へーなんて聞いていて講評が始まり、どうせすばらしいとかほめちぎるんだろうなんて考えていたら…根底からひっくり返されたのでした。具体的でわかりやすく、それでいて厳しい言葉の数々。根底には音楽に対する愛情があるのがはっきりわかります。子どもの可能性に対して、研鑽と献身を求める態度に、迷いや甘え、おもねりはいっさいありません。校長は、この清水先生をはじめとする「みんなのコーラス」講評陣のファンなのです。そして驚くべきはこういう講評が機能しているということ。つまり、この放送に出ている各学校の合唱指導の先生も子どもたちも、少なくともこのレベルで努力し、評価されているということなのです。実際に校長はいろんなかたに話すのですが、美術の指導には昔から根強く「教えてはいけない」という信仰(?)があるのです。確かに、ある意味、頷けるところもなくはないのですが、校長的には創造性や探究心に対する考えかた、とらえかたの相違から生まれる誤解なのではないかと思うのです。といいますか…えらい方々から叱られることを覚悟して言うならば…その「教えてはいけない」という考えの何割かには、指導の結果からの責任逃れ・努力の放棄・指導力のなさについての問題のすり替えが含まれているようです。(あー言っちゃった。)いつもに増してきついことを書くのは、やはり、美術が尊敬されない原因を、美術の指導者が作っているのではないかという疑問や反省があるからなんですね。そりゃあ「こどもはいじっちゃいけない」とか「自ら学ぶことが大切」とかだけ言っていられるなら気楽でいいのですが、正直言って美術以外でそんなこと言ってる業界がありますか?逆にそういう言いかたをしている、せざるを得ない業界は、もっとずっと厳しいのではないでしょうかね。能や狂言、雅楽とか、神社仏閣の棟梁とかのように「見て盗め」という厳しさがあるならわかりますが、美術教育はもっとずっとぬるいです。一部には美術家・ヤノベケンジ氏率いる京都造形芸術大学の『ウルトラファクトリー』など、すさまじくスパルタを売りにしているところも出てきていますが、やはりこの方向は圧倒的に少数です。美術はそういった自由なものであって欲しいという期待があるのもわかっているつもりではあるのですが、同じような年齢の子どもでありながら、美術以外なら、もっともっと具体的に努力している分野がたくさんある、というのが事実です。
 …ということを「みんなのコーラス」聞くたびに考えさせられるんですよ。美術はどうあるべきなんだろうって。入り口は広く、夢は大きく。しかしそこから真剣に学ぶに値するものでないと、いつまでたってもマイナーなものでしかないですよね。やはり学ぶことには手ごたえがいります。気を付けないと、味見して、とりわけて、ふーふーして、あーんして食べさせていながら、いつまでもひ弱で困るなんて言ったりしがちです。うーむ、図太くいきましょう!