2010年2月 柳本浩市×まほうの絵ふで 博士がぼくらに話したこと

 博士こと柳本浩市さん。ワシは未だかつて、こんなに大量の情報を頭の中に入れている人を見たことがない。ウオーキングディクショナリ(歩く辞書)どころか、リビンググーグル(生きるgoogle)なのだ。すごいのは頭の中だけではない。自宅をはじめ、全国6ヶ所にある博士の倉庫には、ガムの包み紙から石器、そして隕石に至るまで世界どころか地球の外から(?!)までも集められた様々なコレクションが収蔵されており、いまだ増殖中なのだという。博士の森羅万象に対しての膨大な知識は日々集められたそれらのモノから分析されている。そんな日本を代表するコレクター、柳本博士が昨年の秋からなぜかワシらのまほうの絵ふでに登場。すごすぎて理解不能なところもないでもないが…年明けに開催した『未来をつくる眼差し』展までの活動の中で、デザイン研究チームはもちろん、一緒に行動したワシらまで、それはそれは様々なことを学んだのであった。今月はそんな博士プロジェクトの全貌をレポートするぞな。

脳内マップの全貌
 会場である大丸藤井セントラル7階。まずエレベーターの扉があいて目に入るのは黒板に描かれた博士入魂の「脳内マップ平面版」。展覧会の案内にもなっているこのマップ、実は博士が子どもたちからの質問を受けながら(!)下書きなしで(!!)約2時間で(!!!)描きあげたものだったのだ。描かれたキーワードは今回のワークショップで子どもに出されたお題と同じもの。しかも関連するものどうし線で結ばれている。この網の目のように入り組んだ地図状の情報。平面で描かれている時点ですでにくらくらするほど複雑。気が遠くなりそうなところをぐっと踏ん張っていよいよ会場へと進むと…おおおお!そこはまさに柳本ワールド!華やかな色と整然とモノが並んだその物量感に圧倒されてしまう。すぐに目に入るのは「柳本博士の脳内マップ立体版」広い会場内の空間に、宙に浮いて並んだキーワード。日を追うごとに赤ん坊の脳神経のごとく繋がりが増えていき、最終日には巨大な網の目状のかたまりに成長!ひとつひとつの繋がりが、来場者が見つけた関係性でできている。子どものためのワークショップだったが、漢字を読むのもやばめのキッズはもちろん、大人も夢中になって繋がりを探したのであった。デザイナーなどその道のプロも嬉々として参加しておった。参加者は天才柳本博士のバッジもゲット。今回の展覧会は来場者の滞在時間が長かった事もポイント。なぜなら見れば見るほど発見があったから。まさに博士のアタマの中は、掘っても掘っても底が見えない。

博士のコレクション
 博士と校長のあいさつ文では、なぜにこの展覧会なのか、教育とデザイン、ものごとを考えることに対しての両者の思いがつづられ、続いて博士のコレクションが整然と並ぶ。「オリンピック」「万博」といったものから「IBM」「コカ・コーラ」そして「ガムの包み紙」「宝くじの券」に至るまで。まさに圧巻!校長のお気に入りは「包装紙」昔の図案の奥ゆかしさ、つつましさというか…しみじみよかったのう。実はこれまで単一カテゴリーのコレクション紹介は博士のもとに多くの依頼があり、雑誌の特集や展覧会の依頼は数知れず。もちろん博士の持ってる物でまかなえるそうなんだけど、今回の眼差し展のように、全貌(のホンの一端、全体の30万分の1くらい?)が紹介されること自体、日本で初めてなのでした。そう言われてみればわざわざ東京から見に来た人がずいぶんいたもんなー。

博士の個人年表
 今回の展覧会で隠れた人気スポットがここ!博士の年表。現在につながる相関関係への興味はここからすでに始まっており、桁外れの行動が羅列されてる。ギャラリートークでも人気大。いわく4歳で「(日本の)おんがくはどうやって生まれたか」という研究に没頭。なんでもラテン語の声帯の本を参考に、日本の音楽における考察までをしたのだというから恐れ入る。現在最先端の研究とされている、最短距離を選ぶという粘菌の行動も、博士に至っては南方熊楠に触発され9歳の自由研究の題材になっている。そのときの時代背景と流行ったもの、そして柳本少年の姿を思い浮かべると、なんだか無性に笑える。圧倒されると人間笑うしかない。

世界のミルクマップ
 世界地図状になった展示で、置いてあるのは世界各国から持ち帰った牛乳の紙パック。もちろんデザインも言語も多種多様。普通はそのままゴミになってしまうものが、博士の考察で言語や宗教そしてデザインの哲学を知るための教材になっている。もちろんイスラム文化圏は羊やヤギのミルクパックになっている。ロシアのマトリョーシカ型など、牛乳パックのイメージも大きく変えざるを得ない。そういえば博士、えふでの帰りに牛乳買って帰ってたもんなー。

消費行動調査隊
 今回子ども達との授業のスタートになった「消費行動調査・店内マップ」と、その「調査メモ」の一部。調査は2日間で約700データ。博士の指導もあり洞察力、仮説の立て方も、最終的には多くの大人を唸らせるレベルに。みんななかなかのマーケッター。博士いわく「企業にとっては数百万の価値がある調査」たしかに企業の重役の方々がうーむと唸って長時間夢中になって解読してました。えへへ。

まとめ
 じっくり読み解くと3〜4時間はあっという間に経ってしまう濃い展覧会でした。柳本少年を想像しながら、これからの教育について考えていただけたと自負しています。あ、実は博士はコレクターではないと公言されておられます。集めるのが目的ではなく、博士の収集には分析と検証が組み込まれています。それこそ蓄積が面となり立体となって体系づけられてゆく。そんな博士の思考の一端に触れたことが、子どもたちの将来にどのように影響するのか、えふで校長は楽しみにしております。