2015年3月にアートラボの授業でとりあげたジョナス・メカスの代表作『リトアニアへの旅の追憶』(1972年)を、16ミリフィルムでみる上映会を行いました。会場は▶︎D&DEPARTMENT HOKKAIDO ギャラリー。会場には、4歳からおとなまで、約40名が集まりました。写真のネガフィルムを含め「フィルム」というものが身近に無くなってしまった現在。映画館でもデジタル上映が増え、フィルムで映画をみる、という体験自体が貴重なものになっています。
今回、▶︎シアターKINOさんから映写機を、「▶︎メカス日本日記の会」さんから16ミリフィルムをお借りしました。映写を担当してくれたのは、デザイン会社3KG代表のアートディレクター、佐々木信さん。学生の頃、シアターKINOさんで映写のアルバイトをしていて、32ミリフィルムを映写していたそうです。
リールに巻かれたフィルムをみんなに見せながら、映写のことを佐々木信さんから説明。ジョナス・メカスのことを、岡本零先生から話してもらいました。
この大きなリール1本で上映できるのは、約30分。『リトアニア~』は、3本のリールに収められています。しかも上映するのは、字幕なしの英語版! 日本語字幕が入っているものは、32ミリのブローアップ版(*オリジナルの16ミリフィルムから、ほぼ倍の画面サイズに拡大現像したもの)しかなく、小規模の会場では映写が難しい、ということもあり、オリジナル英語版での上映になりました。
映画は3つのパートに分かれています。第一部が、第二次大戦で故国リトアニアを追われたジョナスがニューヨークにたどりつき、そこで16ミリフィルムカメラを手に入れて身の回りの光景を撮り始めた1950年代の映像。第二部が、27年ぶりにリトアニアに帰り、お母さんや友達と再会する1971年の映像。第3部が、ジョナスと弟のアドルファスが働かせられていた強制収容所があるハンブルク、そして友達と訪れたウィーンの1971年の映像。
映写機でフィルムがまわる心地いい音が背中のほうに響きます。意味がわかる「言葉」ではなく、何かを伝えようとしているけれども意味がわからない「音」としてジョナス・メカスの声を聞きながら観る映画。アメリカに連れてこられて、ジョナスも、意味がわからない音としてしばらく英語を聴いていたのでしょうか?
「動く写真をみている感じだよね。ものすごく久しぶりに映写機動かしたけど、やっぱりいいなぁ」と佐々木信さん。
映画の上映が終わってから、岡本零さんが6月にメカス家を訪れたときの様子を報告してくれました。ブルックリンのアパート。窓際に、ラボの作品をジョナスと息子のセバスチャンがいっしょに並べていってくれるところ。フィルムとフィルムをつなぐ「スプライシング」という作業を、ジョナスがやっているところ。
「『スプライシングは、映画をつくるなかでいちばん退屈な作業だ』って言いながら、何十年も毎日、これを続けてるんだよね」と零さん。刺激的な面白いことだけで、何かが作れるわけではないんですよね。
さて。翌日の12月24日は、ジョナスの93歳(!)の誕生日でした。みんなでバースデーケーキでお祝いをしました。ハッピーバースデー、ジョナス!
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