デザイン研究チーム/牛乳パックから考える

教室に登場したたくさんの牛乳パック。

札幌でよく見るのは真ん中のサツラクか。全国各地でいろんなメーカーのがあるんだな。これだけでも比べて見ておもしろいもんだが…

なんと国を越えて海外の牛乳パックも登場。こちらはスイスの牛乳。箱の大きさからして違うぞな。

こちらは中国。漢字だらけかと思いきや英字も多数。

こちらはスウェーデン。色も模様もシンプルかつポップな印象。

これらのパッケージを通して、各国の文化や生活を考えてみるというのが最終ミッション。観察力や推測、調べものやレポートの出し方など、これまでの講座で行ったすべての力が試される。チームに分かれて、国別の牛乳パックからいろんなことを想像して調べものをしていくのだ。

こちらはスウェーデンチーム。着目点は「プラスチック製のボトル」「きれいなシマ模様」「パックの折り方、口の開け方がちがう」「裏面の表示は何だ?」などなど。

中国チームは「妙に英語が多い」「牛乳なのになぜか羊のイラスト」「牛乳には珍しい黒いパッケージ」というあたりに着目。パソコンでの情報検索も、キーワード調べで相当鍛えられたのだ。

こちらのスイスチームは全てのボトルに書かれていた3つの文字が最大の謎。「そもそもこれってスイス語?」博士のアドバイスもあり、スイスの国土の位置や人種、歴史まで検索が進められる。

各チームリーダーの調査結果の発表では、いろんなことが明らかに!まずスイスチームの報告によると、スイスはドイツ・フランス・イタリアに囲まれた国家で、国内ではその3カ国語が主に使われている。そのためどのボトルにも「MILCH」「LAIT」「LATTE」と3カ国語で牛乳の表示がされてることが発覚。

博士によると、スイスでは牛乳以外にもあらゆる日用品が各国の言葉で表示されてるらしい。すげ!スイスのデザイナーってたいへんぞな。ちなみに緑のパックに書かれた「Budget」というのは、牛乳以外にもいろんなものを作ってる大きな会社のなまえなんだって。

次の中国チームの報告では、宗教や食の安全問題の話題が飛び出す。はじめにこの羊のイラストについては「北京にはイスラム教徒が多く、昔から牛よりも羊を飼う伝統があるため、牛乳ではなく羊の乳を飲むそうです。」なんとこれは牛乳ではなくて羊の乳だったのだ。

さらに外国人が多いから?と予想されていた英語表記に関しては「食の安全面に不安があるため、周辺国、特にオーストラリアからの輸入が多いそうです」という報告が。つまりこの英語表記はオーストラリアの牛乳からきているもの。外国語が書かれていると、なおさら海外からの輸入品だというイメージも強くなるってわけ。

ちなみに右のパッケージでは高級感を出すために黒を使っているのでは?という報告も。

これらの一連の中国チームの報告を聞いた博士がひと言、「完璧ですね。」えーっ!あの厳しい柳本先生がいま、完璧って言った!快挙とばかりに教室騒然。一気にボルテージが上がる。

最後のスウェーデンチームの報告では、北欧デザインやエコロジーなど今話題のキーワードが。まず北欧デザインは全般的にさわやかできれい、シンプルなデザインが多いことが挙げられる。このストライプのパッケージはArlaという会社のもの。

ちなみに裏面には、牛乳を使ったレシピなどが書かれている。「これは月変わりで変わるそうです」。へー、いいね、おもしろい。

さらにスウェーデンはエコの面で先進国のため、牛乳にも紙パックではなくプラスチック製のものがある。そしてArlaでも使われているこの紙パッケージはテトラパックと呼ばれ、実はスウェーデンで発明されたそう。これが「全世界的に使われています。」ほんとだ、よく見たら他の国のパックにもテトラパック社の表示が!もちろん日本のにも

博士の補足によると、Arla社のシマ模様の太さは脂肪分を表しており、細いものほど低脂肪分。さらに牛のマークの周りが円で囲まれているのは、オーガニックに飼育された牛の商品で、より安全であることの目印。ってことを聞くとスウェーデンのデザイン力はすごい。お店に並んでるとこを想像しても、遠で見てすぐにわかるように工夫されてるのだ。

各チームの発表が一通り終わったところで、次に出てきたのは「牛乳の世界マップ」。西ヨーロッパや北欧はもちろん、アメリカやアジア各国のパックがずらり。

だんだんものの見方も鋭くなってきたのか、子どもたちの質問もなかなか鋭い。博士はどんな質問にも的確な答えをくれるから、実におもしろいのだ。

改めて考えてみると、博士にはほんとにいろんなことを教えてもらった。日常でも人やものをていねいに観察してみると、そこにはいろんなヒントや情報がある。他人の立場でものを考えることが、デザインの最も大切なこと。そして当たり前に思うものも見過ごさず、ひとつずつ分析して調べていくことで、いろんな可能性が拓けてくる。さらには文化の多様性。世界中のデザインには文化や宗教、歴史などの背景があり、言葉や絵も他人にどうわかりやすく伝えるかを工夫することで、様々な問題が解決できることもある。

〈まとめ〉
柳本博士が若いデザイナーを見ていて思ったことや、教育全般に対する疑問が今回のワークショップの原点にありました。結果、えふでが思うに「水と土のないところには花は咲かない」教育は陽の光のようなもんだ。興味や関心、そして基盤となる知性・体力。これは自分で何とかするしかない。逆に言うと、興味があれば、チャンスが生まれるってことじゃないか?それをどこまでやるかは自分次第。今回の柳本博士の授業についても、ここまでハードだとは誰も想像しなかったであろう。なおかつ調べものがここまでエキサイティングだとも思ってなかったであろ?やるって言ったらやるのだ。これが実践力。