デザイン研究チーム/消費行動を調査する

10月10日(土)
まほうの絵ふでに博士登場!何でも知ってるおもしろ博士。子どもの質問にも優しく教えてくれる…聞く人を飽きさせない豊富な知識と話題で、さっそく子どもたちのこころをわしづかみ!いろいろ解説してくれる話がおっもしろいのなんの…先生たちまで「なるほど!」「そうか!」発見の連続。ぬぅ…これは勉強になるっす。

今日みんなが実施するのはスーパーマーケットでのお客さんの行動調査。どうやって商品を選んでいるのかを、ひたすら観察→メモに記録してデータを持ち帰るのだ。調査するにあたり問題点はふたつ。調査隊の半数は小学生のため、①お客さんの行動を客観的に見ることができるか。 ②大人の考えを想像することができるか。出発前に客観視やお店の作り、調査方法についてなどの概要を学んだあと、いざ地元のスーパーマーケットへ出発。

土曜ということもあり、お店はかなりの混雑ぶり。
「いいか、お客さんの邪魔するなよ!」
「怖いおじさんいるかもしれんぞ!」念を押されて調査スタート。

さっそく店内に散らばってみたはいいが、「ど、どうしよう」
各自で調査対象のターゲットを探すのだ。

商品を手に取ったり、値段を見たり、隣の商品と比べて見たり…ものを選ぶ時の手や目の動きをひたすら観察しつづけて記録をとる。
「バレたら嫌がられるかも…」びびりまくる子どもたち。はじめはおっかなびっくり、遠巻きに…

商品がカゴに入ったら、すかさずダッシュ。
買われたものは何か?商品名・メーカー・値段まで詳細データを書き込まねばならん。

途中、柳本先生から観察の指導が。
「買い方の違いや傾向を見るために、ある程度ひとつの商品を続けてチェックするのがポイント」
「一番上のをよけて、わざわざ下の方から取ったりしてない?」
た、たしかに!

これじゃ調査にならん!とばかりに、だんだん大胆になる調査隊員。
すぐ隣で堂々と凝視。

買い物してるフリする作戦。

向かい側に立って正々堂々、真っ向作戦!

あ、ここにも!

ぬぅ…短時間でここまで成長するとは。マーケッターの素質あり?!

ということで、初日からかなりいいデータが集まりました。

うーむ。なかなかいいとこ見とるぞな。
しかし…まだまだデータ数が足りん!調査活動は翌日に持ち越し。

10月11日(日)
巨人にむらがる子どもたち。初めはどこか人見知りしていた子どもたちも、知の巨人・柳本先生にはすっかり夢中ぞな。

どんな質問にもまっすぐ答えてくれるからおもしろいらしい。「6000年くらい前には…」「温暖化って言うけどそもそも…」「マヤ文明やインディアンの占星術では…」どこを突いても出てくる出てくる…だいたい、話のスケールが4桁くらいちがうのだ。そりゃおもしろいわな。

そして昨日に引き続き、スーパーマーケットへ。夕方と午前中では客層が違うことが判明。早速再度消費行動の調査にチャレンジ。

二日目はスピードが格段にアップ!子どもたちの目的意識もはっきりし、さらに買いそうなお客さんかどうか、ターゲットの見分け方までうまくなったぞな。短時間にも関わらず、昨日を超す数のデータをゲット。二日間で約700枚!がんばった。

教室に戻ったら、お昼ごはんを急いで食べて集めた情報の「見える化」。メモに記入した8種類の行動を、店内マップの上に色ドッドで表現してみるという試み。

店内マップは1.8m×2.4m。デカい!
各売り場に小さな点々をひたすら貼っていく。

昨日・今日でゲットしたデータの紙を積み上げると約12cm…ひい〜!しかし地道にデータを編集し続けるという、ある意味柳本さんらしい試みぞな。ここは先生たちも協力して、必死に貼り続けること2時間半…

妙なチームワークの良さも生まれた頃にやっとこさできあがったのだ。

では試しにデータを見てみるか。
例えば「ぶどう」はどうやって選んどる?

色を記号に置き換えると
B→A→C→B→G→A→B→C→G→H→G
つまり、値段を見る→手にとる→くわしく見る→手にとる→購入を決める→手にとる→値段を見る→くわしく見る→購入を決める→購入やめてもどす→購入を決める…と、買うまでにいろいろと迷ったり考えたりしてただな。

で、すげ事実が次々に見えてきた!
店内入ってすぐに積み上げられていた柿の売り場。今が旬の果物ぞな。

い、いくら何でも多すぎね?博士曰く「エスカレーターから店内に入る時、まっすぐ正面に見える」「後ろには野菜の緑もあり、柿の色がきれいに見えてた」「そのまま積んであるから、手にとりやすい」「裏返して見たり、隣の柿と比べたり、買う人のこだわりが表れる」ぬー、なるほど!

店の奥にあった割に、かなりにぎわっていたのはこちら。
豆腐や納豆のコーナー。

各ご家庭でこだわりがあるのか…よく見て買っている印象。

そして逆に、全くもってこだわりが感じられないのがこちら。

たまごを手にとる→購入を決める、
たまごを手にとる→購入を決める…
笑っちゃうくらいとんどの人が即買いしとるらしい。
ふしぎ!卵は何でもいいのか?

いやー、たしかにこうやって色や数量などで一目瞭然になると、データの傾向がよりはっきり見えてくるぞな。マップを見ることで、文字情報とは全く違った思考の回路が生まれてるような…これがまさにグラフィックのちからってやつ?

今回は観察力、とりわけ無意識に動いている人から、客観的な目線で情報をキャッチできるようになったぞな。さらに普段は何気なく見過ごしている店内に、大小さまざまな工夫があることも発見。そして何より大きかったのは、表現方法を工夫すると伝達力や理解の度合いを格段に高くすることができる…これってかなりクリエイティブな仕事ぞな。たったの二日間でこんなにたくさんの内容を盛り込むとは!さすがは柳本教授、感服いたしました。さらに博士の「データから仮説を立てるところまでやりたい」との一声で、このマップを使った作業は翌月の授業へ持ち越し。

11月21日(土)
うっすらと雪が降りはじめた11月。博士と久々の再会を果たし、早速前回の店内調査を見直しながら検証作業を開始。

不思議な行動やおもしろい動きは、吹き出しにしてマップ内に表示。

こうやって改めて書き出してみると、買い物をしている人たちって、ほんとにいろんな行動をとっているのだ。何度も触ってみたり、魚を押してみたり、缶を振ってみたり…そのほとんどが無意識にしているように見える。しかし今日考えたいのは、なぜそんな行動をとるのか?というお客さんの心理。それぞれ思いつくままに書き出して、付箋をペタペタ貼っていく。はじめは「安いから選んだ」「おいしそうだったから買った」というようなコメントが多かったが、柳本先生からあれこれヒントをもらううちに、だんだん興味深い仮説が出始める。

例えば同じ商品なのに、わざわざ下の方から取って買うのは…

不思議と手で触る率が多かったパン売り場は…

長々と迷って吟味されていた柿は…

ふむふむ、そうかも。他にも、

ぬぁるほどね。
賞味期限的な目線でいうと、そういう心理もあるのかも。

他人の行動から、ここまで心理を読み取れればなかなかのものである。

買い方・選び方が商品によって違うことがわかると、自ずと滞在時間についても気になり始める。柿やパンなど、選ぶのに時間がかかる商品のところは「売り場が広かった」。逆にたまごや豆腐などパッと買われるものは「取りやすいように積まれていた」「立ち止まりもせずに、歩きながら取ってカゴに入れていた」。さらに人気の惣菜売り場などは「奥の方にあった」ってことは…何らかのお店の意図があるに違いない。そういやペットボトルや牛乳など重たいものや、かさばるペット用品、ティッシュなどの大きなものは、レジの近くにあるよな!買い物の最後に手に取れるようにしてあるってこと?…柳本先生曰く「商品をデザインする以前に、買う人の目線を持つべし」なるほどなー。たしかにこれって、基本中の基本。なのに、デザインの専門教育でもなかなか触れられてない。これぞいわゆる「オバちゃん観察」、実際に現場で見るのが一番勉強になるぞな!…ぬぅ柳本先生、おそれいりましたです。