柳本博士のコレクション

【コレクションその1】オリンピック

これは1968年メキシコオリンピックの選手村の食券。選手たちはこれを持って食堂に行ったんだね。他にも柳本さんはこのメキシコオリンピックのグッズをいろいろと持っています。
バスのチケット

競技ごとのチケット

これは選手のユニフォームにつけられたワッペン。何のスポーツかわかるかな。

柳本博士によるとこの当時のメキシコはまだ識字率も低く、文字が読めない人たちが多かったそう。そのためこのオリンピックのグッズには絵や記号が多く使われています。競技の種類や開始時間はもちろん、よくよく見るとチケットにはゲートや席の指定まで全てグラフィックで表現されています。ちなみにメキシコにはマヤ文明から続く絵文字の文化があったため、グラフィックデザインの面では先進国だったそうです。

なるほどそう見ると、これらのコレクションからメキシコという国についても知ることができるわけだ。ものを集めるのっておもしろいね。

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【コレクションその2】リーバイス

これはジーンズのメーカー、リーバイスのレシート。よく見ると「San Francisco,Dec15,1899」って書いてある…ってことは、ちょうど今から110年前のものだ!もっと古いのがこれ。納品書みたいなものだな。

うーむ。今見てもかなり凝ったデザインが施されている。さらに万年筆の手書きの文字が雰囲気満点。

こちらは1950年当時、リーバイスの製品全部に付けられていたタグ。「創業100年」…ってことはリーバイスの創業は1850年。

柳本博士いわく、ジーンズってもともとは労働者向けのものから始まったので、ワークウェアのイメージが強くあったそうな。それが1930年代くらいから映画やコミックでカウボーイのスターなどが登場し、労働者の中でもカウボーイは良いイメージ(特におしゃれな)が出来たんだって。しかし1960年代に入るまでジーンズはまだ一般的ではなく、学校やレストランなんかに履いてったら追い出されるようなものだったらしい。

ちなみにこの4枚のカードは、当時多くの人たちに使われていた万年筆のインクを拭き取るための紙。そういった日用品に広告を入れるのって…今でいう街頭で配ってるポケットティッシュみたいなものか。ちなみにリーバイスのロゴの下に「オーバーオール」って書いてあるのもポイント。リーバイスでは1955年頃までジーンズのことを「(ウェスト丈の)オーバーオール」と呼んでたそうな。

このタグもね、今でもよくこんなのがジーンズのヒップポケットあたりについてるでしょ。ギャランティカードと呼ばれる品質保証をうたったものらしいが…「一番上にfor over 70 yearsとあり、創業が1850年なので、1920年代のものと判別出来ます。」ぬぁるほど。

こうやって博士と一緒にモノをみていくと、ほんとにひとつひとつがお宝に思えてくる。ただの切れっ端じゃないんだぜ。それぞれにストーリーを読み解くためのヒントが隠されてるのだ。

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【コレクションその3】万博

これは1970年の日本万国博覧会、通称・大阪万博のリボン。えふでのお父さん・お母さんたちで行ったことある人いるのかなー。いやおじいちゃんおばあちゃんか。なんと6000万人を超す入場者が来場した過去最大の国際博覧会なんだって。みんなこれつけてたのかな。

1970年といえば、カラーテレビがまだそれほど普及していなかった時代。車持ってる家も少なかったであろ。『人類の進歩と調和』と題されたこの万博はまさにみんなのゆめみらい。そしてその頃、かの柳本博士は生まれたばかり…のはずが、ええええ?なんでこんなの持ってんの?

招待券!非売品って書いてある…
そしてこちらは若者向けの割引券。

右側に小さな文字で「¥600」や、安いっ!
…と思ったがちと待てよ。当時の物価ってどんくらいなんだ?ワシなりに調べてみたところ、ラーメン1杯が当時は140円くらい。だいたい今の5分の1くらいと考えると…単純に計算して大阪万博の割引入場料は約3000円くらいってとこか。

すごく気になって、これどうやって手に入れたのか博士に聞いてみた。そしたら「関西には万博専門のショップなどもあり、そういうお店やコレクターと交換したり、有効な入手方法は全部やってみます」とのこと。へえー、なるほどのう。

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【コレクションその4】ガムの包み紙

ワシが好きなのはアップル…ってのはどうでもいいが、博士に聞いてみたところ、これは「チェコのものです」。世界各国のガムの包み紙を大量に集めてるそうな。その数ぬぁんと…約20万枚!ひい〜っまったく…気が遠くなるぞな。だって、札幌ドームでさえ4万人だぜ。野球観戦しながら全員でガム噛んだって…ってそんなこともどうでもいい。

問題は、博士がいったいどうやってこの数を集めたのかってことだ。
①毎日毎日、ガムを食べた。
②買いまくった。
③道ばたで拾った。
こたえはどれだ?
「これも大体万博グッズの収集方法と似てます。東欧は印刷物が結構あって、細かいもののコレクターが多く、比較的アンティークショップなどで見つけることが多いです。もちろん、見たこともないものが落ちてたらちゃんと拾っていきます」

さらに不思議なのは、その20万枚のガムの包み紙をどうやって保管してるのか?「全てファイリングして倉庫に保管しています」

ほ、ほんとだ。まだまだあるぞ。


中にはどこの国のかわからないのも…


相当な几帳面さ。これが20万枚分なんて…一体ファイル何冊分になるんだ?ぬあぁぁ!

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【コレクションその5】コカコーラ

これは昔、コカコーラの輸送時につけられていたタグ。1920年代のものだそうです。当時は木製のケースに入れて運んでたんだって。どこに運ぶものかを書いて、迷子にならないようにしてたのか。それにしても、コーラのデザインって昔からあまり変わってないんだな。CocaColaって赤いロゴは遠目で見てもすぐ目に飛びこんでくるもんね。

この袋みたいのは何だろ?

実はよく見たら袋じゃなくて、筒になってんの!上も下も口があいてて、中に瓶を通して使うものなんだって。カフェとかで瓶のまま飲むとき、手がべたべたするので瓶のまわりにつけてカバーしてたらしい。へえー、流行ってたのか?

そしてこれ、広げると中にはコカコーラの作り方が載ってるん。

学校で工場見学に行ったらもらえたものらしい。1950年代はじめのもの。コーラを社会に浸透させるために子どもの教育にも力を入れてたんだな。たしかに、今は当たり前になってるけど、はじめは相当変わった飲み物だったろうね。

そしてマニアには涎垂であろうこちらのカード。1920年代から40年代にシリーズ化されたもので、仮面ライダーカードみたいなコレクション向けカードですって。自然史や科学、生物学を中心にした内容が多かったらしく、これは国立公園など自然の名所をコレクションするシリーズ。

子どもも大好きだよねえこういうグッズ。コカコーラはなんと1886年に誕生、約100年以上の時を経て現在の巨大カンパニーに成長しているそうな。ワシこの話聞いて、教育ってすげーって改めて思ったぞな。責任重大。だって、子どもの頃に影響を受けたものって大人になっても好きだよね。初期教育は白地に染込むように心に留まる。良くも悪くも、ブランドってすげーぞな。
…なんてことを考えさせてくれたこれらのアイテム。博士はこうやってつながりや社会の流れを見てるんだな。柳本博士が仕掛けてきたいろんなブームが大当たりするってのもなるほどうなずけるぞな。

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【コレクションその6】マッチ箱のラベル

このマッチのラベルは1950年代のもの。どこの民族かと思ったらロシアですって。ひょっとして博士…マッチのラベルも大量にお持ちで?
「約50万点ほどあります」ひえ〜っ!それがこうやってきっちりとファイルに保管されてんだぜ。

こう見るとマッチってどこにでもある分、何だかその国や地方のテイストが強く出てるように見えるね。マッチは切手とかと同じようにコレクター多いと思うけど、博士はどうやって集めてるんだろ。

「東欧が中心です。ヨーロッパは広告要素が強いのですが、東欧は共産国だったので広告がほとんど存在せず、民族的な踊りや衣装、動物や虫、マナー告知や1番多いのはプロパガンダ的意味合いが強いものです。そういう意味もあって1950〜60年代の冷戦が一番激化している時代が多いです。旧東欧では結構コレクターが多く、現地では比較的よく発見できます。」

…博士ってばきっとさ、小学校低学年の頃から「プロパガンダ的」とか「共産圏では」とか、平気で口にする子どもだったんだぜ、まったく…稀少動物ぞな。学校の先生たちは相当困ったであろ。えふでに博士みたいな子がいたら、ワシならどうすっぺ。うーむ…生徒っつーより、ちんまい友達になってたかもしれんぞな。質問なんかしたりして…博士の子ども時代の収集物や記録も、みんな興味津々であろ?
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【コレクションその7】砂糖の包み紙

なな、これ、砂糖の包み紙。カフェとかでよくグラニュー糖とか入ってるあれだって。「どんな地域でも使われていますが、こういうパック型と細長いスティック型と国によって主流が違ったりします。」ほほう。日本はスティック型が多いぞな。もっと細長いやつ。それにしても、これまた見事に多彩なバリエーション。

「もともと歴史が古くないので特性はほとんど無いのですが、60年代前後は方面が砂糖メーカーやコーヒーメーカーのロゴ、もう片面が全然違う企業の広告表記(銀行とか)の入ったものが多いです。」なるほどのう。小さなところも逃さず広告を入れるってわけか。

で、これも大量にお持ちで…?「これはカフェ周りのグッズとして集めているので比較的少ないです。約1万点くらいです。」ぐえぇーっ…それを少ないと思うか多いと思うかは人によりけり。つーか博士くらいであろ、少ないなんつーのは。

ていねいにファイリングされたこれらのアイテムは、もはやただのモノではない。ワシらは普通に生活している中で、どれだけちゃんとものを見てるのか。今使ってるものは、50年100年後にどんな価値あるものになるかわからんぞな。さらに古い倉庫に眠っているものや、道ばたに落ちてるものでさえ、博士の中では貴重な研究資料だったりする。このようにして博士の知の体系は増殖し続けていくのだ。